先にお伝えしていたが、甲状腺機能低下症の人が命綱としている「甲状腺ホルモン薬」の供給が危うい状況にある。国内のシェアをほぼ独占していた製薬会社の工場が、この大震災で被害を受けたためだ。期待されたジェネリックの製薬会社もお手上げ宣言と、緊張は高まる一方であったが…。

国内に出回っている「甲状腺ホルモン薬」の殆どだと言われてきた、“チラーヂンS(成分名レボチロキシンナトリウム)”。「あすか製薬(東京都港区)」が福島県いわき市の工場で生産してきた。ところがこの大震災により操業停止を余儀なくされ、同社は17日に出荷ストップを発表した。

これにより、国内2%のシェアを持つジェネリックの “サンド(成分同じ)” を生産している「Sandoz(サンド=東京都港区)」に一気に期待がかかった。当初同社はHPに、「山形県上山市の工場は順次生産。安定供給に努めている」といった挨拶文を掲載していたためだ。だがそこに、突然厳しい内容の発表が加わった。

“弊社のレボチロキシンナトリウム製剤に関して、現在、他社の出荷停止を契機に新規に採用を検討したいというお問い合わせを多数いただいております。しかしながら、現時点で弊社の市場シェアは2%程度と極めて小さいため、即座な対応は困難な状況でございます。皆さまにはご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。”

これを受けて「あすか製薬」が、国内市場最大手の責任と意地を見せた。同社はHPにて、3月16日付けの発表には未確認情報が掲載されているためそれを削除したとし、17日付け第2報を確認するようにと訴えた。そこにはこう謳われている。

“現時点で通常の供給が困難な状況にありますが、1. 製造委託会社によるレボチロキシンナトリウムの生産、2. 海外製品(レボチロキシンナトリウム)の緊急輸入、3. いわき工場の操業再開等のあらゆる方策により、供給再開が可能な見込みです。”

まずは多くの患者、医療機関が胸をなでおろしたはずである。返す返すも、国内シェアに大きな偏りがあったために、大切な治療薬がいとも簡単に供給困難に陥ることの恐ろしさを痛感する。首都機能分散化とともに、医薬品の製造ラインに関しても是非ともここで分散化を検討して欲しいものである。
参考
あすか製薬:http://www.aska-pharma.co.jp/pdf/company/news20110317
Sandoz:http://www.sandoz.jp

(TechinsightJapan編集部 古瀬悦子)

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