日本には犯罪者に対する極刑として「死刑」が存在します。現在も求刑や執行が行われており、「死刑」という文字を新聞やニュースなどで目にすることがしばしばあります。ですが、実は世界各国(特に先進国)では死刑を廃止する動きが活発化しています。

 特にEU諸国は死刑廃止の傾向を強めており、ほとんどの加盟国で死刑制度が撤廃、もしくは事実上の停止状態となっています。これに対するのが、アメリカ、中国、そして日本といった国々です。これらの国は犯罪に対して「厳罰化」を推し進めており、ここ近年では死刑執行の回数が増加してさえいます。こうした動きに、人権団体などが抗議を強めているのが「死刑」を巡る世界の現状です。

 たしかに、死刑には問題が少なくありません。「人権」という点での批判や、「冤罪」という危険性も指摘されています。ですが、それでも「死刑」を廃止するのは容易ではありません。

 本書『慈悲と天秤』では2006年6月に起こった「東大阪集団暴行殺人事件」の主犯とされる小林竜司被告(当時21歳)について書かれています。男性2名を集団で暴行し、生き埋めにして殺害したこの事件では、実行犯である小林被告に死刑が求刑されており、3月25日に最高裁で判決が下される予定です。

 本書を執筆したのは、わずか25歳の法科大学院生・岡崎正尚さん。岡崎さんは「自分の罪をよく理解しており、二度と同じような犯罪を起こす可能性がないように思えた」小林被告の死刑求刑について疑問を抱いたことから、小林被告と文通を行ない、その交流を本書にまとめました。

 はじめは小林被告に、減刑を訴えるように強く進めていた岡崎さんでしたが、交流を続ける内に、そのような思いが激しく揺さぶられていくこととなります。

 まず、誰よりも小林被告自身が自分の罪を理解し「自分は死刑に値する」と感じていること。そして、「それ以外に遺族に謝罪する方法はない」と考えていることです。こうした人を前に、死刑廃止を呼びかけるのが正しいのでしょうか。それとも、死刑存続を訴えるのが正しいのでしょうか。

 当事者ではない立場から死刑廃止や存続について意見するのは簡単です。ですが、ひとたび彼らの思いに触れれば、問題はとても複雑なことがわかります。本書は報道の裏に隠された普段目にすることのない死刑の一面を、私たちに克明に伝えてくれます。



『慈悲と天秤』
 著者:岡崎正尚
 出版社:ポプラ社
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