京極夏彦さんの新作『オジいサン』が中央公論新社から今日、出版された。

 本作は、これまでの京極さんの作風からは想像のつかない、素朴な老人の生活を描いた“老人小説”となっているのだが、これだけ聞くと「え!?じゃあ、いつも京極節は読めないの!?」と不安になってしまうファンもいるのではないだろうか。

 それは心配ご無用。本作でもこれまでの“京極節”は健在である。
 ただ、72歳の独居老人の頭の中をそのままに書きつづった『オジいサン』は、まさにマジメ。そして、時に可笑しく、すっとぼけていて、それでいて、ふっと涙が出そうになる。京極さんの新境地といえる内容に仕上がっているのは、まぎれもない事実だ。

 そして、京極さんはもう1つ、大きな“仕掛け”を本作に用意していた。
 話題のiPhoneアプリ「朗読少女」とのコラボレーションだ。
 新刊が発売された今日から、「朗読少女」(株式会社オトバンク/提供)でも本作の第1章が配信されている。

 「朗読少女」は女子高生のキャラクターである乙葉しおりちゃんが、名作文学を朗読するiPhone対応アプリ。「読む機会がなかった名作文学を手軽に楽しめる」といった声や「しおりちゃんの声に癒されたい!」というファンの根強い支援もあり、今や50万ダウンロードを超えるヒット作品となっている。

 一方、京極さんは毎年秋に同じ事務所の大沢在昌さん、宮部みゆきさんと「リーディングカンパニー」という朗読会を開催しており、ファンから“レインボーボイス”と呼ばれるその美声を駆使し、多くの観衆を魅了している。
 京極さんはこのコラボレーションについて「乙葉しおりファンのみなさんすいません。残念なことになりました……。しおりさん、年寄りくさくてごめんなさい」とコメントしている。

 京極さんが描いた72歳の老人の頭の中を、女子高生のしおりちゃんが語るというのは、非常に“斬新な仕掛け”だ。
 「朗読少女」版は同名書籍の第1話「七十二年六ヶ月と一日」のみの配信で、前半部、後半部各350円でのリリース。また単行本は1575円で発売されている。ほかに電子書籍版も配信されるという。新たな京極ワールドを多方面から楽しんでみてはどうだろう。
(新刊JP編集部/金井元貴)

■『オジいサン』特設ページ(中央公論新社)
http://www.chuko.co.jp/special/ojiisan/
■朗読少女 公式ホームページ
http://www.rodokushojo.jp/

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