東京マラソン、ランナーの“絆の物語”

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 2月27日、東京マラソン2011が開催されました。マラソンは個人競技ということもあり“自分との孤独な戦い”というイメージがありますが、ランナーはそれぞれに想いを抱え、それぞれにストーリーがあるのだそうです。

 マラソンランナーの“絆の物語”を紹介した一冊『世界中のどんな言葉よりも、あなたの一歩が勇気をくれた』(中村聡宏/著、経済界/刊)より、「盲目の金メダリスト(パラリンピック)」が登場するストーリーを紹介します。(以降の内容は本文より一部を抜粋しています)。

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 はじめて違和感を覚えたのは高校時代だった。夕方から夜にかけて暗くなってくると、視界がなくなった。不安は感じたが、そのうち治るだろうと思っていた。
 しかし、医者からは「将来的には、視力がなくなる」と宣告された。

 ユーイチは34歳のときに、視力を完全に失った。

 ユーイチがひとりで走れるのは、トレッドミル(※ランニングマシーンのこと)の上だけだ。手すりと左手をロープで結い、身体が左右にずれて床のベルトから落ちないよう注意しながら走る。

 しかし、ロードを走る場合にはひとりでは走れない。必ず伴走者が必要になる。
 
 フルマラソンを2時間40分で走るユーイチの伴走は、その程度のタイムで余裕をもって走ることができるランナーでないと務まらない。ユーイチは、ランニングクラブでの練習会に参加するようになり、そこで、ある程度走力のあるランナーの中から、有志に伴走をお願いするようになった。
 
 見えないことに恐怖心を感じてしまうと、人は腕を振って走ることができなくなる。だからユーイチは、以前は腕を振らずに走っていた。しかし、これではスピードアップにも限界がある。より早く走るために、腕を振って走る技術を体得した。恐怖心との闘いだった。

 思い切って腕を振るためには、「安全に走ることができる」という安心感が重要だ。それゆえ、伴走者との信頼関係の絆がもっとも大切になる。伴走者は、ユーイチにとっての目であり、カーナビである。よく気づき、よく話してくれる伴奏者が理想的だ。いろいろな情報を話すことによって知らせ、盲人ランナーならではの危険を察知し、伝えてくれる伴奏者が左にいると、安心感を持って走ることができる。
 
 ランニングクラブで出会い結婚した妻、ヨシコは、ユーイチにとって普段のジョグの伴走者であり、人生の伴走者でもある。ヨシコは眼科に勤務しているため、徐々に視力を失い、悲しみにくれる患者たちを大勢診てきた。

 一方、目が見えなくなってしまっても屈託ない明るい性格で他人を笑わせ、きれいなフォームで走り続けるユーイチの姿は輝いて見えたし、それがヨシコにとって驚きでもあった。
 ユーイチからの猛アタックで、ふたりはつきあうようになり、そして、次第にパートナーとしての絆を深めていった。
 
 日常の外出は、ヨシコがユーイチの手をつなぎ先導する。
階段やエスカレーター、細やかな段差や人の流れなどを知らせるために声をかけながら、ふたりは歩いていく。

 どこの夫婦とも同じように、ふたりもケンカする。
 「どんなケンカをしても、僕たちふたりは手をつないで帰るんです」

 ユーイチがヨシコをどんなに怒らせたとしても、ヨシコはユーイチを置いて帰ることができない。ふたりは手を取り合って帰ることになる。

 ヨシコは、ユーイチをもっとも深く理解する伴奏者になった。


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 この本に登場するランナーたちは、摂食障害を克服した新米ママ、病床の母に力を与えたいと願う娘、流産を乗り越え授かった娘のために走る父親など、皆さまざまな人生を歩み、いろいろな思いを抱えて走っています。
 彼らの生き様を通して、マラソンの魅力に触れてみてはいかがでしょうか。
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