加賀恭一郎シリーズの書き下ろし最新長編、東野圭吾『麒麟の翼』が講談社から刊行された。前作『新参者』(2009年9月、講談社刊)は、『このミステリーがすごい!』と「週刊文春ベストミステリーベスト10」の双方で年間ベストワンを獲得。阿部寛主演の連続ドラマ化も実現し、累計48万部と、四六判ハードカバー文芸書としては異例のベストセラーになっている。今年1月3日には、前々作にあたる『赤い指』も、同じTBS系列で単発のTVドラマとして放送された。

 新作『麒麟の翼』は、前作につづいて日本橋界隈が舞台。
 ある夜、東京都中央区の日本橋川にかかる日本橋の中ほどにある麒麟像の台座にもたれかかるようにして、ナイフで胸を刺された男が座り込んでいるのが見つかる。男は瀕死の状態でここまで歩いてきて、力つきたらしい。病院に搬送されたが、男は死亡する。
 一方、現場近くで警察官を振り切って逃走した若い男は、被害者の財布と書類鞄を所持していたことが判明。だが、この容疑者は、道路を横断しようとしてトラックにはねられ、昏睡状態に陥ってしまう。捜査の過程で次第に明らかになる被害者と容疑者の関係。動機は充分。事件はこのまま決着するかに見えた。だが、被害者はなぜ、刺されたあとも日本橋をめざしたのか......。
 日本橋警察署の加賀恭一郎警部補は、地を這うような入念な聞き込みで、事件の背後に隠された意外な真実を解きほぐしてゆく。
 今回、加賀とコンビを組むのは、『赤い指』に登場した警視庁捜査一課の松宮脩平(ドラマ版の「新参者」にも横滑りで出演し、溝端淳平が演じた)。従兄弟同士の関係にあたるこの二人の捜査が『麒麟の翼』の中心になる。

『新参者』のような大仕掛けや大向こう受けするトリックはないものの、後半の畳みかけるような展開は東野圭吾の独壇場。結末は、某ベストセラー(が代表する最近のミステリの傾向)に対する東野圭吾からの返答と読めなくもない。

 なお、加賀恭一郎シリーズは、本書が9作目(長編としては8作目)。『卒業』(1986年)、『眠りの森』(1989年)、『どちらかが彼女を殺した』(1996年)、『悪意』(1996年)、『私が彼を殺した』(1999年)、『嘘をもうひとつだけ』(短編集/2000年)、『赤い指』(2006年)までの7作は、いずれも講談社文庫に収録されている。

(大森望)







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