作り手→飾り手→消費者」が横並びに
素材のポテンシャルを信じ、使い手の心地よさに再接続すること。
越川 今年のテーマは“RECONNECT”、直訳すると「再接続」。
これ、僕たちにとって実は怖い話なんですよね〜。
ヒデキ 思っていた以上に、いつの間にか消費者とデザインする側がずれていたという事。僕たちが作り、デザインした物がいつの間にか押しつけの物になってたのかも知れないね。例えば“デコ”しすぎたり、いらない機能を付けすぎたり、もっとピュアに本来のポジションに戻って、消費者と再接続していこう、という意味がテーマ。
越川 それと一方で、今までのセオリーを一度壊して、変化させてもう一度つなぎ合わせると今っぽくなる、そんな意味も込められているようです。
ヒデキ 面白かったのが、トレンドブースに近づくにつれて、ラクダの皮のような匂いが強くなってくるんだよね。結局、インスタレーションで森林をイメージして天井から無数に吊られたロープのジュートの匂いだと後でわかるのだけど。
越川 ロープは自然その物、自由に形を変えられる物の象徴として使われていて、更に匂いもデザインの要素に加えるという新しい試みでした。しかも素材の匂いを強く感じさせるように、あえてあれだけの本数を揃えたそうです。
ヒデキ 先ずは「SOBRIETY(平穏)」。雰囲気を大切にする所から生まれたテーマ。さらに4つのサブタイトルが付いていて、「SERENITY(落ち着き)」、「NEW SCHOOL(新派)」、「CLASSIC MODERNITY(現代的古典)」、「MINIMAL LUXURY(上質な機能美)」。シンプルなんだけど、素材感の強い物、上質で品が良いという事がココでは前提になるね。
越川 ココで言う古典はミッドセンチュリーのデザインの事で、誠実で良質なデザインが多かった。それを新しくデザインしなおして、伝統と男性的な要素を加えているようですね。
ヒデキ ウールやモヘヤなんかの女性的優しさを感じる素材に男性的な物を合わせるからマニッシュが生きるし、男性的ミニマリズムに女性的なくすんだピンクを入れるのも良いよね。
越川 そうそう、モノトーンやアースカラーをベースにして“ポイントで色を使う”というのも、今後のキーになるようですね。
ヒデキ 肝心なのは、上質な素材をシンプルに使うという事。近年の消費動向の「少し、たまに」から「わずかでも良い物」という変化が良く表れています。
越川 次は「MIX MASH(ごちゃ混ぜ)」。新しい組み合わせで次なるクリエイションを生み出す、チャレンジングなテーマ。4つのサブタイトルは「EXPERIMENTAL(実験的)」、「CULTURAL HYBRID(文化的融合)」、「TECHNICRAFT(新・工芸品」、「TREASURE AND TRASH(宝物とガラクタ)」。ココはとにかく色が弾けていて、楽しいテーマですね。
ヒデキ 地域と文化と人種を融合して、新しい価値観にチャレンジしている。楽観主義でエネルギッシュ。ごちゃ混ぜなんだけど、コントラストのバランスを大事にしているんだよね。
越川 北欧デザインとアフリカンを融合したり、ハイテクとローテクを組み合わせたり、赤と黄色をぶつけたり。更にそれらを本来静かであるべきベットルームに使ったりして、とにかく実験的なんですよね。
ヒデキ 以前ならばこのスタイルは若い世代の為に作られていたのだけど、今回は大人(成熟世代)に向けて提案していく志向なんだよね。大人が使う事で若い世代が引っ張られる、戦略的デザインでもあるところが面白い。
越川 ジオメタリックも多く使われてますが、民族的なデザインとしてもシャープで現代的なデザインとしても、上手く取り入れていく事が今っぽい感じに欠かせないですよね。
ヒデキ 「ごちゃ混ぜ」、「民族的」などのキーワードはここ数年必ず挙がるのだけど、「アフリカン」というのは完全に定着したよね。
越川 次は「UTILITY(実用性)」。一見チープで無骨で面白みが無いような展示なんだけど、そこには深ーい意味が込められています。4つのサブタイトルは「MAKESHIFT(間に合わせ)」、「INDUSTRIAL ACCENT(工業的なアクセント)」、「WORKWEAR(作業着)」、「UTILITY LUX(実用品の豊かさ)」。
ヒデキ 工事現場のゲージにたくさんの生地を均等に吊り並べ裸電球を吊った、一番素朴な展示でしたが、“実用品の可能性”という思想がそこに全て詰まっていて、意外と奥の深いテーマなんだよね。
越川 日常的にありふれているデニムやキャンバス、色も工事現場で使われているような色、それらも束ねたり包んだりするだけでカッコ良くなる。デザインもDIYの時代なんですよね。むしろ、間に合わせの物がカッコ良いんです。
ヒデキ 僕たち作り手が完全に作りきるのではなく、あえて隙を作って見せて、そこに消費者が手を加えたり使い方を決める、誰もが何かを作っていく時代到来!
越川 だからヒデキさん、あんなに隙だらけなんですね〜。
ヒデキ そうそう、って大きなお世話だよ!(笑)
越川 でも確かに物はあふれているし、デザインにもそろそろ飽きてきた時代。デザインの上で消費者との繋がり方も「リ・コネクト」がいるんですね。
ヒデキ 深澤直人さんのデザインや何でもない日常品を集めたロンドンのジャスパー・モリソンの店がうけるのも、わかるよな〜。
越川 次は「WILDERNESS(原野)」。素材その物を使う事で造形美への関心を招く、という事が基本になっています。サブタイトルは「PRIMITIVE RAW(自然のままの素材)」、「NATURE’S HARVEST(自然の恵み)」、「FALK TALES(民話)」、「UNTAMED NATURE(手付かずの自然)」。
ヒデキ 一見「SOBRIETY」と似ているんだけど、決定的に違う点は、「SOBRIETY」が優しく品の良さが欠かせないのに対して、こちらは野生的。それでいて優しいフォルムで仕上げてバランスをとっているんだよね。
越川 素材感がそのままだから素朴なのだけど、編んだりヒダを取ったり、ふんだんにテクニックを使ってますよね。1アイテム1カラーになるけど、組み合わせとディテールで十分魅力的になっています。
ヒデキ 素材その物の色というのは、染色による廃液も出ないし、経年変化を味として捉える事がエコの美学として今の時代に合っているんだよ。
越川 劣化した皮や錆びた鉄、もっと言えばダメージ加工の洋服とか、経年変化をデザインとしてカッコよく捕らえることは既に広く認知されているけど、そこまでをストーリーとして考える素材選びも大切なのです。
ヒデキ ここでの手の加え方というのは、あくまでも自然の力であるという事と人の手による物、もしくはそう見える物でオリジナリティーを求めていくという事が大切です。
越川 今年は素材その物を強調しているので、初めはテーマ毎の境界線が曖昧に感じられたけど、それだけ本質的な部分に立ち返っているのですね。
ヒデキ ある程度の事は工業的に出来ちゃうようになっていて、第三国がいずれ低コストで作っちゃう。だからより複雑な物へと移行してきたのだけど、これもいたちごっこ。結局自然のポテンシャルに頼らざる終えないんだよ。でもただ麻のレースを吊って、「はい、終わり」にしたくないよね。
越川 そこが難しいところで、ただ高価な生地を使うとか、新しくて高度なテクニックを使うとなどの作り手の独りよがりになってしまうのではなく、消費者に心地よく感じてもらうためのクリエイティブが求められているのです。
ヒデキ 今までは「作り手→飾り手→消費者」という風に縦に繋がっていたと思っていたのだけど、同じラインに横並びになってデザインが完成するという、「使い方」という新しいデザイン要素が加わったんだよね。例えば、インテルのCMのように色やデザインが揃わなくたって、、丈寸法がいびつでもデザインとして成立してしまうみたいね。まったく新しい使い方・美学・価値観がうまれつつあるのかもしれません。いま、僕たちがすべきことは、素材のポテンシャルを信じ、使い手の心地よさに再接続することなのかもしれないね。

全文はインテリアビジネスニュース本紙にて