ピアノの鍵盤がデザインされた装丁に、まず心惹かれる奥泉光著の『シューマンの指』。生誕200年を迎えたドイツの作曲家シューマンが、日本のミステリーの世界で美しい調べを奏でています。

 物語は、語り手の「私」が高校時代を回想する形で進みます。音大入学を目指す主人公は、未来を嘱望されている2歳年下の天才ピアニスト「永嶺修人」と知り合います。修人と友人でありながら、心では師と仰ぐ「私」。慕いあいつつも、単純な友人関係ではない二人に、ある日事件が起こります。

 死体の第一発見者となった「私」と、その直前に「奇蹟のようにすばらしい演奏」をしていた修人。その後さらなる悲劇が起こり、修人はピアニストの道を絶たれ、「私」は音大を中退、医師になります。二人の間にいったい何があったのか。読者はこの謎を解明するべく、物語を読み進めることになるのです。

 謎の出来事は物語の終盤まで明らかにされません。読者の興味を持続させるストーリー展開と、予想もしない驚きの結末。もしそこがコンサート会場なら、しばし拍手をすることもできないまま、茫然と席に座り続けることになるでしょう。

 本書には音楽があふれています。修人が弾くシューマンのコンチェルトやソナタ。実際の曲を知っていたら、読みながら頭の中に音が流れて、想像力が何倍にもふくらむことでしょう。ぜひ、BGM付きの電子書籍にしてほしいところ。読みながら聴き、聴きながら読む。本書がいっそう味わい深いものになることは間違いありません。

 なら、映像化にも向いている作品なのでは、と思う人もいるかもしれませんが、それがそうでもない。そこがまた本書の特徴であり、魅力の一つなのですが、詳しく述べるのはネタばれになるのでやめておきましょう。



『シューマンの指』
 著者:奥泉 光
 出版社:講談社
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