おそろしく“残酷”な新鋭ホラー作家の新作

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 裸にされ、磔にされ、軍刀で足首から先を切断され、七輪で長時間炙った銃剣を足首の切断面に押し当てられる…。想像しただけで、ゾワッとするほど怖くて痛い。
 本作『爛れた闇の帝国』(飴村行/著、角川書店/刊)では、目を背けたくなるようなグロテスクな描写とミステリーをまとめて堪能できる。

 大東亜戦争中、昭南島の独房に監禁された一人の日本兵。どうやら大罪を犯したらしいのだが、記憶を失っており何も分からない。記憶を呼び起こすために刺激を与えるという名目で受ける拷問の中、徐々によみがえっていく記憶と隠された秘密…。
 一方、現代では、高校2年生の正矢が生きる気力を失っていた。母親が先輩である不良の崎山と付き合い始めたのだ。高校をやめてしまった正矢を、親友の晃一と絵美子が心配し励ますが、正矢の過去には恐るべき秘密があった。
 監禁された日本兵の物語「闇に囚われし者」と、現代を生きる正矢の物語「闇に怯えし者」。この2つの物語が交互に語られ徐々にリンクしていく。

 作者の飴村行氏は、2008年に『粘膜人間』(角川書店/刊)で第15回日本ホラー小説大賞長編賞を受賞してデビュー。第2作『粘膜蜥蜴』(角川書店/刊)は「このミステリーがすごい!」で6位、「週刊文春ミステリーベスト10」で7位、「最高の本!2010」国内ミステリー編で2位に選出。昨年には第63回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞しており、これからの活躍に期待が集まる新鋭作家だ。
 『粘膜人間』『粘膜蜥蜴』『粘膜兄弟』の粘膜シリーズ3作の舞台はどれも戦時中の仮想空間だったが、本作では初めて戦時中以外を舞台に選んでおり、そんなところも注目だ。

 作中にある正矢の親友の晃一の祖父である慧爾という人物の言葉に、「人間の心の奥底にはね、必ず爛れた闇が潜んでいるんだよ」という一文がある。この一文がまさに本作を物語っている。
 グロテスクな描写以上に、人間の心の闇の怖さを感じることだろう。
(新刊JP編集部/田中規裕)

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