シュトゥットガルトの岡崎慎司が試合出場可能になったようだね。FIFAがドイツサッカー協会への選手登録を暫定的に認める裁定を出したという。

岡崎と清水の契約は1月31日までだった。シュトゥットガルトは清水に無断で岡崎と交渉を始め、冬の移籍市場の最終日である1月31日に契約を結んだ。清水はこれを二重契約だとして反発し、移籍証明書の発行をしぶった。そのため岡崎はドイツで試合に出場できない状態になっていた。というのが、今回の一件の大まかな概要だ。

ルール上は清水が正しい、とかいろいろなことが言われていたが、この問題は結局、代理人の立ち居振る舞いに問題があったのだと思う。代理人がきちんと清水に仁義を切っていたかどうか。そこのコミュニケーションを誤っていなければ、契約の残り日数が1日だろうか1ヶ月だろうが、そんなことは関係なかったはずだよ。寝首をかかれたような清水としては、感情的にもなる。移籍金ゼロでエースFWがいなくなってしまったのだからね。

かつて磐田からボカ・ジュニアーズに高原直泰が移籍したときも、同様の問題が起こった。代理人が磐田に無断で高原を連れ出し、強引に契約をまとめたのだ。磐田は激怒し、その代理人は出入り禁止になっている。

代理人は、選手の移籍仲介料として報酬をもらう。本来であればその利益を最大化するためにあの手この手を使うのだけど、日本の場合は移籍金ゼロで海外に移籍させることが多い。昨今の不況もあるのだろうが、タダよりマシ程度の手数料でやってしまっているんだね。代理人ビジネスも相当厳しいんじゃないのかな。

日本代表がよその国で国際親善試合を戦うときに、ギャラはもらえない。ひるがえって、日本に他国の代表チームを呼ぶときには、多額のギャラを払っている。相手がたとえ3軍を連れてこようとも、だ。結局、それが今の日本サッカーのステータスを象徴している。だから、選手の引き抜きも移籍金ゼロのレンタルが多い。

たとえば中田英寿がベルマーレからペルージャへ行ったときは約4億強、小野がレッズからフェイエノールトへ渡ったときも約4億5000万円ほど移籍金が発生した。今、次々に海外組が増えてはいえるが、海外クラブからすれば、通信販売の無料お試しキャンペーンみたいなものだろう。タダ同然で獲得して大ブレイクした香川という前例があることも大きいよね。

それに、Jリーグのクラブには、選手の売り買いで利益を上げようという志向が少ない。親会社の予算の中で動いているから、ビジネス性に乏しいのだ。プロじゃないね。これでは、シビアな世界で日常的に切磋琢磨している海外クラブの食い物にされて当然だよ。

日本のレベルがもっと上がって、ギャラがもらえるような国だったら、欧州クラブからJリーグがなめられることもないし、今回の岡崎のような問題も起きなかっただろう。手放しで海外移籍を喜ぶレベルから、早く脱却しなければいけないね。(了)