「本は紙である」という環境で育ってきた僕らに、電子書籍はどんな未来を見せてくれるのでしょう。『Web本の雑誌』は電子書籍について真剣に考え、ブック・コーディネイターの内沼晋太郎さんとともに、電子書籍に関わる方々、あるいはきっとこれから関わることになるだろう方々に、お話を聞いてきました。第2回のゲストはTwitterから飛び出し、いまや各方面で活躍されているメディア・ジャーナリストの津田大介さん。いまソーシャルメディアの申し子は電子書籍についてどんなことを考えているのでしょうか。


【ほしいのは、日本語完全対応端末】

内沼 昨年12月に国内メーカーからシャープのGALAPAGOS、ソニーのReader、KDDIのbiblio Leafが相次いで発売されました。先行していた海外組のKindleやiPadと合わせて、電子書籍端末がほぼ出そろった感があります。いま、目の前に並んでいますが。

津田 おー。そろってますね。

内沼 このなかでお持ちのものは、iPadと......?

津田 じつは自分で持っているのは、iPadだけなんです。反射光の読書専用端末はどこかのタイミングでほしいとは思っているんですけど、なかなか決められませんね。

内沼 津田さんが電子書籍端末に求める要件とはどんなものでしょうか。

津田 まず大前提としてきちんと日本語に対応していること。やっぱりネイティブな言語への完全対応は、日本語の電子書籍を読む上では必要ですよね。あとは電池の保ちがいいこと(笑)。

内沼 電子書籍端末のバッテリーは数日程度は保ちます。バックライトを使わずに済むkindleやソニーのReaderといった反射光端末は文字表示を保持するのに電力を必要としませんし、同じく反射光端末のbiblio Leafにはソーラーパネルも搭載されています。ほかにほしい機能はありますか?

津田 やっぱり通信機能はほしいですね。「ほしいときにどこでも買える」という即時性に加えて、ソーシャル・リーディングなど電子書籍ならではの新しい可能性も通信機能が搭載されることで初めて見えてきます。昨年『ブックビジネス2.0』という書籍を共著で書かせて頂いたんですが、そのiアプリ版の電子書籍にはソーシャル・リーディング機能が組み込まれています。

内沼 そのソーシャル・リーディング機能はどんなものですか?

津田 お気に入りのフレーズをマーキングするとTwitterにそのまま投稿できるというものです。この間も、Twitterを立ち上げていたらタイムラインにいきなりその本の内容が飛び込んできた。どうやらソーシャル・リーディング機能を使って『ブックビジネス2.0』の読書会が行われていたようなんです。面白いのが、同じフレーズに興味を抱いても感想が違うのがわかるんです。異なる感想コメントが積み上がっていくことで、全体の反応もぼんやりと見えてくる。「これぞソーシャル!」という面白さがありましたね。


【通信機能の先には無限の未来がある】

内沼 過去になかった端末で過去になかった読書スタイルが生まれている――。読書の可能性の広がりを感じますよね。例えばリアルイベントとしての読書会でも、通信機能つきの端末なら両手のなかに万単位の蔵書があるようなもの。まだ誰も気づいていない読書の楽しみを発明できる楽しみもありそうです。

津田 あと、通信機能には他にも期待しているところがあるんです。僕は普段ノートPCと本を数冊を持ち歩いていて、その他、必要であればiPadも持って行く。

内沼 同時に持ち歩くときには、ノートパソコンとiPadはどういう使いわけになるんでしょうか。

津田 パソコンでWebを見ていて、気になった情報や資料をDropboxやEvernoteといったクラウドサービス(※)に落として、iPadで見るというやり方ですね。ただ、ノートパソコンとiPadって同時に持ち歩くと重いんです。その他に数冊持ち歩いている書籍を含めた文字情報のビューアーとして、軽量なデバイスがほしい。ノートパソコンとiPhoneの間にカラーじゃなくていいから、気軽に持ち歩けて文字がサクサク読めるような端末は本当にほしいんです。
※パソコンなど自分の端末に置いていたアプリケーションやデータをインターネット上で処理するサービス。常に最新のものに更新された情報に、PCやスマートフォンなど異なる端末からアクセスできる

内沼 Kindleやbiblio Leafなど通信機能がある電子書籍端末に、さらなるサービスが付加されていくといいですよね。ネットに常時接続されていて、環境ごとに知の共有ができるような機能。それが他人との知の共有ならソーシャルになりますし、自分が持っている複数の端末で共有するならクラウドになる。これからの電子書籍と紙の本の最大の違いは、ネットにつながるかつながらないかになってくると思うんです。

津田 時間や場所を選ばず、売り場にすぐアクセスできて、たくさんの本から選ぶことができるという機能は、電子書籍ならではの絶対的なアドバンテージですからね。


【電子ペーパーの進化には期待せずにはいられない】

内沼 そう考えると、通信機能はこれからの電子書籍端末にはなくてはならないもの。その意味では、通信機能のついているKDDIのbiblio LeafやNTT docomoのSH-07Cなど、携帯キャリアから出ている端末には可能性を感じます。日常でノートPCを使っていて「ネットにつながらないと意味がない」と思う瞬間がありますが、近い将来、電子書籍端末もそれと同じ感覚になるのではないかと思うんです。

津田 雑誌やWebや仕事の資料など、すべての文字がこれ1台で読めるようになってほしいです。電子書籍は法律書など専門書のデータベースとしては最高の端末ですよ。判例などのデータも最新のものに更新できる。ハード面ではEインクに代表される電子ペーパー――反射光端末の可能性にはすごく期待しているんです。ページを送るときの動作なども向上するでしょうし、カラー化へ向けての技術開発も進んでいると言いますよね。

(ここで、撮影のため、室内から屋外に移動)

津田 今日のような晴れた日だと室内との違いがハッキリしますね。屋外だとやっぱり電子ペーパーは見やすい。

内沼 キャンパスの中庭や公園など限定された場所だけでなく、ベランダや窓際などの日差しが強いところでも読める。

津田 電子ペーパーのように、バッテリーの保ちが良くて軽量でサクサク読めるというのは、移動中に情報をインプットすることも多い僕にとって大切な条件。いずれは絶対買うんでしょうが、これからも進化は続くでしょうから、いつ買うかが悩ましいですね(笑)。

(構成:松浦達也)

<プロフィール>
津田大介
つだ・だいすけ●1973年東京都生まれ。ネット、音楽、ハード、マルチメディアなどのジャンルに詳しいメディア・ジャーナリスト。2010年度から早稲田大学大学院政治学研究科非常勤講師に。インターネットユーザー協会代表理事。著書に『Twitter社会論』(洋泉社)、『未来型サバイバル音楽論』(中公新書)など


内沼晋太郎
うちぬま・しんたろう●1980年生まれ。ブック・コーディネイター、クリエイティブ・ディレクター。「本とアイデア」のレーベル「numabooks」主宰。Lismo Book Store Magazine編集長。著書に『本の未来をつくる仕事/仕事の未来をつくる本』(朝日新聞出版)







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