ネット時代のヒット商品のつくり方

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■疑い深くなった消費者たち
 私たちに提供される情報の量は、この短期間で大幅に増えた。
 総務省が2009年に発表した「平成18年度情報流通センサス報告書」によると、「選択可能情報量」、つまり“1年間に情報消費者が選択可能な形で提供された情報の総量”は、10年前(この資料上では平成8年度)と比較すると、なんと530倍にのぼっている。
 10年前(2001年)を思い出してみて欲しい。インターネットこそ生活の中に定着しつつあったが、やはり主な情報の入手手段はテレビや雑誌、新聞であったはずだ。携帯電話は多くの人が持っていたが、スマートフォンなんてものは見たこともなかったし、ノートパソコンは高級品だった。

 情報を得る手段が増えたこともあり、情報に接触する機会も増えた。
 消費者たちはそうした時代に対応するように、情報に対するリテラシー能力を劇的に高めてきた。例えば、より安価で良い製品を購入するために――言い換えれば広告に騙されないために、無条件に提供される膨大な情報を使って、購入前に商品の比較検討を行うようになった。

 「疑い深い消費者」。ベストセラーとなった『明日の広告』(アスキー・メディアワークス/刊)で著者の藤井尚之氏は現代の消費者たちをそう表現した。そして、戦略PRプランナーの本田哲也氏は姉妹本となる『新版 戦略PR』(アスキー・メディアワークス/刊)で、広告機会の増加や賢い消費者たちの登場によって、企業のPR戦略は大きな変化が求められていることを指摘する。

■企業は“空気を使った”PRを
 どうして「売れるもの」と「売れないもの」が出てくるのか。これまでは、「宣伝力」や「商品力」といった文句で片付けてきたところが、本田氏は「もはや『商品力』とか『宣伝力』の問題ではない」と主張する。

 では何が重要なのか。
 本田氏が言うのは「空気」だ。その商品が売れるための「空気」ができているか、ということが重要であるというのだ。
 「空気」とは、この場合は場の雰囲気やムードのこと。もっというと、人々が暗黙のうちに共有する情報の集合体のことだ。大勢が知っているからこその「安心感」や「信頼感」は商品が売れる環境を作り出す。

 この空気を生み出す土壌を作り上げるには、3つの要素が必要である。
 1つ目は「おおやけ」。広く世間一般の人に関わっていることである。
 2つ目は「ばったり」。偶然性のことだ。予想外の貴重な出会いを頻発させることが大切となる。
 3つ目は「おすみつき」。推薦人の存在だ。有名人や専門家が推薦することでその商品に信頼感を高めさせ、信頼させるのだ。
 『新版 戦略PR』にはこの土壌を作り上げ、“カジュアル世論”を形成するための方法を、具体的な事例を用いて説明する。

 このPRの変化はネットバブルの出現によって促進したことは間違いなく、そして企業が、PR戦略により力を入れなければいけなくなっているのも事実だ。
 しかし、これはマスコミや広告代理店と連携しづらかった小さな企業でも、PRの戦略次第によっては多くの消費者に自社の商品をリーチできるようになったということでもあるのではないか。いわゆるチャンスであるのだ。この波が続けば、おそらく「お金より頭を使う」ことで結果を出す中小企業はどんどん増えていくだろう。
 大企業だけに志望会社をしぼっている就職活動中の学生の皆さんは、こうした視点から企業を見てみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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