――簡単に伝えてくれると、少しは関心が持てそうです。

大井:経済は、絶対にわかると強いですよ。例えば、今私たちに3、4日お休みがあったら、「韓国行きたい、ソウル行きたい」と思うじゃないですか。それには、ウォンと円の関係だったり、実は身近にあふれる金融の情報が関係してくるんです。円とウォンの為替レートを折れ線グラフで説明されても興味がわかないかもしれないけれど、今、韓国の免税店でお財布を買うと日本で買うより何円安い? と考えるのは、実は、まさしくそれが「経済」。だから、なるべく身近に感じていただけるような報道をしようと心がけています。

――そう言われると、自然と情報を取り込んでいるかもしれません。

大井:鉄の値段が上がった、金の値段が上がったと聞いただけでは、フーンという感じですけど、金の値段が上がればティファニー(Tiffany & Co)のネックレスがもっと高くなると考えてみると、かなりまた興味がわいてくる。鉄も、あちこちで使われているので、その値段が上がれば車の値段も上がる、家の値段も上がるんですよ。それが経済なんですよね。

――本当に身近なものが上がるとなると、気にせずにはいられなくなりますね。

大井:そういうふうに学校でも教えてくれたらいいのにと思いますよね。ですから、少しでも分かりやすい報道ができたらいいなと心掛けています。

――それにしても、日本の状況だけではなくてアジア全体の経済を発信していくのは大変ではありませんか?

大井:今、アジアで急成長している経済というのは、インフレがすごくて、ある意味似た形をとっています。特に、中国経済がすごく伸びているので、日本を含め、どこの国を見ても中国への輸出が増えている。でも、日中関係が更に悪化してしまうと必ず何かしらの影響がでてきます。だから、そういう意味ではアジア全体のニュースは、知っておくのは決して損じゃないと思いますね。

――日本だけの情報だと偏った知識になってしまうのですね。

大井:日本は世界第二位の経済大国の地位を中国に譲りました。そして、国の財政状況は厳しくなる一方です。でも、日本の新聞やテレビは、日本中心の情報が多いので、ちょっと不安になるときはあります。海外にでたがらない若者が増えているようですし、日本にいて全てが手に入るからそれで幸せと言われてしまうかもしれませんが…。

――日本だけの情報に危機感を感じてきました。では、国の経済事情が原因で、職場の人間関係にトラブルが発生することはあるのでしょうか?

大井:シンガポールはもともとイギリスと縁が深いということもあって、インド系、パキスタン系、イギリス人も多い会社です。私のチームには、フィリピン人の男性と、インド系シンガポール人の女性、中国系アメリカ人の女性と、ジャマイカ系イギリス人の上司がいるんですね。国連(国際連合:こくさいれんごう)みたいな感じのオフィスですが、国籍の違いが仕事に影響する事は一切ありません。日中関係が悪化しても、中国人との関係が悪化するわけじゃないですしね。

――では、文化の違いを感じた瞬間はいつでしょうか?

大井:クリスマスパーティーをしたときに、全く違う文化だと改めて思い知らされることはあります。イスラム系の人たちも多いですから、お肉を食べられないとか、お酒が飲めないみたいな。私も含めて、お酒のないクリスマスパーティーなんて考えられないという同僚も多いので、みんなでお酒を持ち寄ってバーベキューをしたりしています。レストランだと話がややこしくなるから(笑)。

――日本だと考えられない。では、最後に経済を知っておくメリットについて教えてください。

大井:経済ニュースも日本の情報だけ知っているよりは、いろいろなビジネス案がでてくるという意味でも、アジア全体のことを知っていると強いですよね。例えばアジアに旅行をして、ここの経済がすごい伸びている、この国では日本のこんな製品が人気だと知ったら、その国に日本の製品を輸出するビジネスができるかもしれないですしね。

――どうも、ありがとうございました!


大井真理子さんプロフィール
1981年東京都生まれ、慶応大学環境情報学部に入学、1学年終了時にジャーナリズム修学のため、オーストラリア、RMIT大学ジャーナリズム学部に入学。
在学中にはコミュニティチャンネルのテレビ向けニュース番組や学生ラジオ局SYN FMで番組制作の経験を積み、Australian Broadcasting Corporation(ABC)など数々の在オーストラリア放送局でインターンを経験。

2004年、アメリカに渡りロイター通信でインターンを経験。2005年、日本のブルームバーグテレビジョンにプロデューサーとして入社、経済報道を手がける。
2006年12月より、フリーランスプロデューサーとして、BBCワールドシンガポール支局に入局、現在はレポーターも務める。

■出演番組
アジアビジネスレポート(月〜金:日本時間7時30分、10時30分、11時30分、12時30分)
ワールドビジネスレポート(月〜金:日本時間13時30分、14時30分,17時30分) ほか

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