SF作家の想像力は、小説という「作品」を通していつも私たち読者を驚かせてくれます。
 しかし、それらはファンタジー的な要素がふんだんに織り交ぜられたものであり、フィクションの域を超えることはありません。

 では、SF作家は現実で起こっている現代のテクノロジーの進化を、どのように捉えているのでしょうか。
 『塵クジラの海』や『蝉の女王』(ともに早川書房/刊)などで知られるアメリカのSF作家のブルース・スターリング氏が執筆した“Shaping Things(新しい物を設計する考え方)” 有料Podcast番組「エグゼクティブ・ブックサマリー」にて邦訳要約版を配信中)をのぞいてみましょう。

 スターリング氏は本書の中で、技術の進化の歴史と新しい技術である「スパイム」の有効な利用方法についての知識を述べています。

 人類は技術を駆使し、物を製造することで進化してきました。
 まず、紀元前200万年前から西暦1500年頃まで、人間は自らの肉体だけを利用して作った道具(アーキファクト)を使い続けてきました。狩りに使う弓などはその典型的な例です。1500年頃になると、人間でも動物でもない動力源を使う「機械」が登場し、さらに第一次大戦後から1989年まではプロダクト、いわゆる「大量生産」の時代がやってきます。
 1989年からは小型機器の時代になります。小型機器とは「プログラミングが可能で、質が安定しておらず、ユーザー変更が可能で、過剰な程たくさんの機能が付けられた物」を指します。パソコンや携帯電話がその代表といえます。

 そして、これからは「スパイム」の時代であるとスターリング氏は指摘します。
 「スパイム」とは「スペース」と「タイム」の2つが組み合わさって作られた言葉で、「物体そのものと、他の物体に関する大量のデータに繋がった物体」という意味を持ちます。
 この「スパイム」は私たちの生活やビジネスを一変させます。例えば、Google検索でキーワードを入力すると様々な知識を得ることはできますが、今のところは失くした自分のカギの場所までは教えてくれません。しかし、スターリング氏の説が正しければ、この失くしたカギがどこにあるかをGoogleで探せる日が来ることになります。
 それだけではありません。行方不明のペットも、なくしたはずの財布も見つかるのです。これが「スパイム」です。また、企業は無線IDタグや製品ライフサイクルといったテクノロジーによって、自社製品の追跡が可能となります。

 スターリング氏は、次の30年の間に「スパイム」が人間社会を変えると言います。しかし、そこで進歩は終わらず、「スパイム」に取って代わる新しいテクノロジーが生まれるだろうとも予想します。
 テクノロジーの進化は一気に起こるものではなく、30年ほどを1つのサイクルとして徐々に浸透していきます。この進化の中で、いかにそのサイクルを予見できるかということが、今後の企業にとっての重要な視点となるでしょう。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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