「運命は、愛する人を二度奪っていく」

 このフレーズでピンときた人は、かなりの東野圭吾ファンと呼んでいいでしょう。根強いファンが多い東野作品の中でも、彼の名を世に広く知らしめた『秘密』(文藝春秋)のキャッチコピーです。同作は何度も映像化されており、1999年には広末涼子主演で映画化。そして昨年には、志田未来主演でドラマ化もされました。

 待望の新作短編集『あの頃の誰か』(光文社)には、今まで世に出ることがなかった「わけあり」の全8篇を収録。そのなかには、「秘密」の原型となった作品「さよなら『お父さん』」も含まれます。

 杉田平介は妻・直子と娘・藻奈美との3人で暮らしていました。ある日、直子と藻奈美を乗せたバスが崖から転落。直子と藻奈美は病院に運ばれるも、直子は死亡、藻奈美は奇跡的に命を取り留めます。ただし、藻奈美の体には直子の魂が宿っていたのです。そこから、平介と藻奈美(魂は直子)の奇妙な生活が始まるのですが......。

 東野氏自身は、この短編小説が気に入らなかったため、長編小説として『秘密』を書きあげることにしたそうです。そのため、今回も収録することを相当迷ったとか。しかし、担当編集者の「これはこれで別物として面白い」との意見と、アメリカの作家ダニエル・キースが『アルジャーノンに花束を』の短編バージョンを短編集に収録しているということから、今回の掲載に至ったそうです。長年封印されていた秘密が、ここにありました。

 そのほか、当時の時代背景も色濃く反映されているバブル期に書かれた「シャレードがいっぱい」や、東野氏が「最大のわけあり物件」と暴露する「二十年目の約束」など、いつもの東野作品とちょっと違う世界がぎゅっと詰まった短編集です。



『あの頃の誰か』
 著者:東野圭吾
 出版社:光文社
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