年金税方式の主張

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今回は河野太郎さんのブログ『ごまめの歯ぎしり』からご寄稿いただきました。

年金税方式の主張
日本の年金制度の根幹は、国民年金です。

もともと第1号被保険者とよばれる約2000万人の農家や自営業者のために創設された制度ですが、その後、約4000万人の厚生年金加入者もすべて国民年金に同時に加入することになり(第2号被保険者)、厚生年金保険料に国民年金保険料も含まれるようになりました。そして、サラリーマンの妻で専業主婦である1000万人も、国民年金保険料を負担しない第3号被保険者として、国民年金に加わっています。

農家や自営業の方々は、毎月の年金保険料を欠かさず40年間納め続けると、65歳から毎月6万6000円の年金が給付されることになります。

しかし、現実にはいくつもの問題があります。まず、6万6000円という年金額は、夫婦の老後の生活に最低限必要となるのが13万2000円ということから設定された金額です。ですから本当は月6万6000円の年金額は最低限保証されていなければならないはずですが、そうなっていません。現在、国民年金の平均給付金額は月5万3000円にすぎません。しかも、この計算には、無年金になってしまった人は含まれていません。

どうして満額の年金がもらえないかといえば、40年の間に、年金保険料を未納にしたり、保険料が免除されたりすると、その分、年金額が減額されてしまうからです。

現在、国民年金の年金保険料の納付率は免除を入れても6割未満です。将来、月6万6000円の年金をもらえない人が多数出ることになります。老後の最低限の生活を保障するはずの国民年金では、現実的には、最低限の生活を保障できないのです。

もっと大きな問題もあります。毎月1万数千円の年金保険料を毎月欠かさず40年間納めて初めて満額6万6000円の国民年金をもらうことになるのですが、まったく年金保険料を納めない人はどうなるのでしょうか。もちろん、65歳で無年金になってしまいます。

しかし、こうした無年金の人が、65歳で他に収入がないと、政府は生活保護を出さなくてはなりません。その生活保護の生活扶助費の額が、満額の国民年金を上回る金額になっています。まじめに40年間年金保険料を納めて6万6000円の国民年金を受け取るか、年金保険料をすべて未納にして6万6000円以上の生活扶助費を受け取るのかという選択であるならば、年金保険料を納めない若者を責められないのではないでしょうか。

しかも、生活扶助費は全額税金ですから、年金保険料を満額納めた人は、その他に無年金の方が受け取る生活扶助費も税金で負担することになってしまいます。

世帯ごとに受信料を納めていただくNHKですら受信料の納付率は100%にほど遠い現実のなかで、今後、今の制度で、すべての国民年金加入者から年金保険料を未納なく納めていただくことは不可能といわざるを得ません。そして、年金保険料の納付率は20代では4割にまで低下しています。今の制度を続けながら、日本人の老後を安心できるものにするのはもう無理です。

一刻も早く、現在の国民年金制度を抜本的に改めて、年金保険料を集めることをやめるべきです。そして、皆様が買い物をするたびにお支払いいただいている消費税を年金目的税にして、年金保険料を納めていただく代わりに、消費税を財源にして年金をお支払いするようにしたいと思います。

今日、1億2000万人の日本人すべてが買い物をするたびに必ず消費税を支払っています。消費税を支払わなければ買い物をすることができないわけですから、年金保険料と違って、消費税は未納になることがありません。消費税を財源にする年金制度には、未納問題は起きないのです。そして、未納問題が起きない年金制度ということは、すべての日本人が65歳になったときに、必ず満額の国民年金を支払うことができるということです。

消費税方式の年金制度の最大のメリットは、保険料方式の年金と違って、“すべての日本人に必ず満額の国民年金を65歳から支払うことができる”ということです。

現在の保険料方式の国民年金では、第1号被保険者は、収入に関わらず、同じ年金保険料を負担しなければなりません。月の収入が5万円の方も50万円の方も同じです。収入が10倍違っても負担金額は全く同じです。

消費税方式の年金にすれば、消費金額の大きい人はたくさん消費税を負担し、消費の少ない人は少しだけ消費税を支払うことになります。消費金額は収入金額に比例することを考えると、消費税方式の年金は収入に応じて年金の財源を負担することになります。

すべての日本国民に最低限の年金を保証する制度の財源負担方法としては、私は保険料方式よりも消費税方式のほうが優れていると思います。

現在の保険料方式の年金制度では、保険料を集めるための莫大なコストを負担しなければなりません。例えば、保険料の徴収に関わる7000人の職員の人件費が約650億円かかっています。保険料を集めるのをやめて、消費税方式に切り替えれば、この人件費負担は必要なくなります。消費税は、国税庁と税務署のシステムで既に集めていますから、消費税を財源にして年金をお支払いすることにしても、今以上にコストはかかりません。

自営業者と結婚した女性は毎月、国民年金保険料を支払わなければならないのに、サラリーマンと結婚した女性は年金保険料の支払いが必要ないという現在の制度の矛盾も、消費税方式にすれば解決します。

こうしたことを考えれば、私は一刻も早く、国民年金を消費税方式に切り替えて、すべての日本人が65歳になったら必ず満額の国民年金を受け取ることができるようにすべきだと思います。

世代間格差の是正
税方式の年金は、世代間の格差を是正するためにも必要です。

保険料方式の年金では、保険料を負担する世代と年金を受給する世代がはっきりと区別されます。しかし、世代間格差を是正するためには、年金受給者にも年金の財源をご負担いただかなければなりません。

税方式ならば、年金を受給する方々にも消費税をご負担いただきますので、現役世代の負担は軽減されます。

なお、政権交代前の与野党7人による合意案では、基礎年金の6万6000円に対する消費税の増税分、われわれの想定では引き上げ幅5%分3300円は、基礎年金に上乗せされます。基礎年金の支給額は月7万円となり、年金に対応した消費税増税分は負担増になりません。それ以外の支出に関しては、ご負担をいただくことになります。

現役世代は月々約1万5000円の一律負担はなくなり、消費に応じた年金の財源負担となります。

さらに、基礎年金を最低保障年金と位置づけることによって、一定以上の所得のある高齢者への基礎年金を減額することによって、さらなる世代間格差の是正ができます。

年金以外の所得が一定額以上の者には最低保障年金である基礎年金を支給しないというルールにすることにより、基礎年金の支払いに必要な金額も少なくてすみ、その定め方によって消費税率の上げ幅を小さくすることが可能になります。

税方式への移行にあたって一番大きな問題となるのは、それまでに支払われた保険料の扱いです。

選択肢は三通りあります。一つは、それまでに未納となった年金保険料相当分を基礎年金から減額するやりかたです。しかし、これは税方式のすべての65歳以上の日本人に満額の基礎年金を支払うというメリットをぶちこわすことになりますので、私は反対です。

基礎年金を減額された人が他に収入がなければ、現在と同じように生活保護を受けることになります。生活保護の上限額を基礎年金の上限額とあわせるのは当然として、本来なくなるはずの65歳以上の生活保護の制度も残さざるを得なくなります。それならば給付を年金に一本化するほうが行政のコストから考えても効率的です。

次の選択肢は、現在の国民年金の積立金をこれまでの保険料の納付状況に応じて還付するというものです。財政への負担を避けるために、還付金額の合計の上限は国民年金の積立金の金額となります。

還付金額は最大でも数十万円程度になると思います。これまでに支払った保険料と比べて微々たるものになりますが、それでもきちんと保険料を支払ってきた人に対して何らかを報いることになります。ある程度の公平性は保たれますし、精神衛生上もよいかもしれません。デメリットとしては、還付するための行政コストがかかります。

3番目の選択肢は、もっともドラスチックです。税方式に変更することにより、基礎年金は最低保障年金となり、給付と負担の関係がなくなります。消費税をたくさん払う人も少し払う人も同じ金額の年金をもらう、あるいは所得制限にかかればたくさん消費税を払ってもこの最低保障年金はもらえないことになるわけですから、それまでに支払った保険料と年金の関係も無くなったと宣言します。

極めて不公平で、精神衛生上よくない選択肢でありますが、行政コストは全くかかりません。国民年金の積立金は、国債の償還に充てる、あるいは賦課方式の厚生年金を積立方式に移行するときの二重の負担の財源の一部に充てる(厚生年金については今後、改めて説明します)などが考えられます。

税方式の年金制度に移行することを選んだなら、最低保障年金の所得制限額をどうするか、どの方式で移行するか、議論した上で決める必要があります。

さらに税方式で議論が必要なのは、海外に長く在住した日本人および日本に帰化した人の年金受給要件です。数年間海外に転勤していましたというならば年金の受給資格に問題はないと思いますが、50年以上海外に在住して64歳で帰国しましたという人は受給資格があるのか、62歳で日本に帰化して日本人になりましたという場合はどうなのか。日本国内での在住年数を要件にするのか等、細かいルール設定が必要です。

基礎年金の財源はすべて消費税とするとして、消費税を基礎年金のためだけに使うのか、年金分プラスアルファの税率にするのかという議論も必要です。

所得制限をかけて年金に必要な消費税率を低く抑えた上で、追加分の消費税率で医療や介護の財源を出すのか、追加分は地方消費税として、道州制の下、各地域に地方消費税率を設定してもらうのかなどの議論も必要になります。

いずれにせよ現在の保険料方式では、現役時代の所得が低いと保険料を支払うことができず、保険料を免除されると将来の年金額が低くなってしまい、最低保障にならないという大きなデメリットがあります。

また、保険料を徴収する以上、単に払い忘れであったり、故意に支払わなかったり、必ず未納問題が発生します。保険料が未納になれば将来の年金がやはり減額され、最低保障になりません。

老後の最低保障をするのが基礎年金であるとするならば、選択肢は税方式になります。

執筆: この記事は河野太郎さんのブログ『ごまめの歯ぎしり』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

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