仕事に忙殺される“マネジャー”の実態を暴く名著

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 昨年、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海/著、ダイヤモンド社/刊)が大ヒットしたこともあり、「マネジメント」の重要性が大きくクローズアップされるようになりました。それは同時に、マネジメントをする立場である「マネジャー」という存在の重要性も明らかにしました。

 しかし、マネジャーという立場は、往々にして仕事に忙殺されがちで、火事の消火ばかりに追われてしまいます。
 マネジャーはどうして組織の他のメンバーにもっと権限を委譲できないのか。どうして組織階層の下から上に情報が伝達されないのか。マネジメント論の研究で多大な業績を残すヘンリー・ミンツバーグ氏は大著『マネジャーの実像 「管理職」はなぜ仕事に追われているのか』(池村千秋/訳、日経BP社/刊)の中で、マネジャーたちを悩ます13のマネジメントジレンマを取り上げ、それを5つに分類しています。
 今回はその分類の中から「思考のジレンマ」の3つのジレンマを取り上げます。

 「思考のジレンマ」には「上っ面症候群」「計画の落とし穴」「分析の迷宮」という3つのマネジメントジレンマが含まれています。

■「上っ面症候群」
 目の前の仕事に忙殺され、物事の理解をする時間が少ないマネジャーは、発生した課題も上っ面をなでただけで片付けがちになってしまうとミンツバーグ氏は指摘します。よく言われるのは、マネジメントの仕事をすると、条件反射的に情報を処理する人が長けた人物になるということです。
 では、そうした状況から抜け出すにはどうすればいいのでしょうか。
 1つは「振り返る」ことです。マネジメントは活動的な仕事であるため、自分の行動を振り返る時間が必要です。激しい重圧に晒されているときこそ、たとえ短時間でも一歩後ろに下がって、冷静になることが大事だとミンツバーグ氏は言います。

■「計画の落とし穴」
 多忙を極める中で、組織メンバーにどう未来を見せ、計画を立て、戦略を練り、考えればいいのか。
 戦略のプランニングを代わりにやってくれる人を見つけて、アウトソースすることも可能といえば可能です。しかし、プランニングは往々にしてその通りには機能しません。そのため、戦略を作るために、マネジャーが必要なことはものごとを総合的に考えることです。
 ミンツバーグ氏は、戦略は地べたの上で学習されるべきものであり、優分析テクニックを駆使して温室の中で戦略を育てたがる頭脳型のマネジャーは戦略プランニングを行う役目に適しているとは考えにくいと言います。

■「分析の迷宮」
 マネジメントの世界は細かく切り分けられています。組織、サービス、戦略上のテーマ等さまざまです。
 「マネジャー」はこうした、雑然と切り分けられた要素を1つにまとめ上げることが期待されます。しかし、分析によって細かく分解された世界をどのように1つにまとめあげればいいのでしょうか。
 例えば、組織はさまざまな部署、役職等に分割されていますが、そうした組織構造は、全部の組織が適切に動く前提で構成されています。しかし実際のところ組織が適切に動くことはありません。
そのため、マネジャーは細かいところから手を入れるのではなく、経験を積み重ねていきながら、大きな全体像をまずは描いていく必要があります。

 ミンツバーグ氏は「組織にとってマネジャーがヒマをもてあますほど危険なことはない」と言い、マネジャーの多忙さは宿命であると指摘します。しかし、そうした多忙さに飲み込まれてしまうと、組織は上手くまわってはいきません。
 『もしドラ』等でマネジメントに興味を持ち、より深く勉強したいと感じた方はこうした大著に手を出してみるのもいいかも知れません。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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