地味な女性小説家の「彼女」と、小説が好きで好きでたまらない会社員の「彼」の物語。

 エンゲル係数、服飾費、潤沢......。口語らしくない単語をぽんぽん使う彼女に彼は興味を持つ。彼女は勤めているデザイン会社の同僚。ある日、彼女のデスクにUSBメモリが転がっていた。社内でのUSBメモリの使用は許可されていない。不正をチェックするため、中のファイルを開く彼。すると出てきたのは、膨大な量の文章......、小説だった。

 一行目から吸い込まれるかのように、物語の中へ意識を持っていかれる彼。一瞬でその小説を好きになった。そして彼女を。だが彼女は自分だけの秘密であったそれを見られたことにひどく傷つく。その謎を解く鍵は彼女の過去にあった。

 思わずキュンとしてしまう急展開な甘い恋のシーンは印象的。小説好きだからこそ、ちょっとした言葉の言い回しが気になったり、想像力が豊か過ぎたりして遠回りしながらもふたりは少しずつ距離を縮めていく。

 彼女は小説家としてデビューし、彼と彼女はお互いを想い合い、支え合ってささやかで幸せな日々を送っていた。しかし、そんなある日、彼女は究極の決断を求められる。彼女が出した答えとは......。

 一番の理解者であり、最高の読者である彼のために、自分の命を削るように物語を紡ぎ続けた彼女。物語の終盤、お互いの気持ちがまるで床に落としたコップの水のようにぶちまけられる。そして羅列される愛の言葉は、活字ではなく美しいひとつの絵のようでもある。

 side:Aは、彼の目線で小説家の彼女を支える物語。side:Bは、彼女の目線で続編とも裏編ともとれる物語が展開される。

 物語に愛された人(彼女)から、物語を愛する人(彼)へ贈る極上のラブストーリー。この物語を読み終え、本を閉じたあなたは思わずこう呟くはず。

 「どこまで本当なんですか?」



『ストーリー・セラー』
 著者:有川浩
 出版社:新潮社
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