リアル“『人間失格』”を地で行った男の半生

写真拡大

 戦後日本を代表するベストセラーの1つが太宰治の『人間失格』でしょう。新潮文庫版だけでも600万部以上の売り上げといいますから、単純計算すれば日本人20人に1人の割合で読んでいることになります。

 『人間失格』の主人公である大庭葉蔵は平たく言えば“異常に繊細で傷つきやすく、そして女にだらしないダメ男”なのですが、人間関係を構築するために虚構の自分自身を演じる葉蔵の姿に、どこか親近感を抱くのではないでしょうか。

 そんな葉蔵の半生と丸かぶりする男がいます。月読寺の住職で『考えない練習』(小学館/刊)などの著者である小池龍之介氏です。小池氏の壮絶な半生が語られた新刊『坊主失格』(扶桑社/刊)にはまさに現代のリアル“葉蔵”とも思える行動がつづられています。


【高校時代】道化となって、人との関係を築くが…
 「自分の存在価値を高めたい」。それまで無頼キャラを演じた小池氏は、高校生になってお笑いキャラを演じるようになります。自分がおかしな発言をすれば周囲から脚光を浴びることができることに気付いたのです。
 しかし、だからといって友達は増えません。ウケなかったら青ざめてその場から消えて死んでしまいたいと思うほどショックを受けたという小池氏。これはまさにリアル“葉蔵”です。

 そして、なかなか上手く人間関係を築けていない小池氏にさらに追い討ちをかける事態が。お笑い芸人を目指しているクラスメイトにお株を取られてしまったのです。唯一のコミュニケーション方法を失った小池氏は「30歳までに自殺する」「高校をやめてホームレスになる」などいわゆる“構ってちゃん”発言を繰り返し、悪い意味で注目を浴びます。

【大学時代】女性関係で家族を巻き込む騒動に。果てに恋人が自殺を計り…
 『人間失格』の中で葉蔵は女たらしとして描かれていますが、小池氏も同じだったようです。大学に入り、初めて出来た彼女は既婚者。彼女の夫を傷つけてしまっても、2人は暴走し、恋の炎は盛り上がります。そして双方の家族を巻き込み、皆を傷つけた末、終息を迎えます。
 しかし、このとき小池氏が感じていたことは「激しい恋をすれば、相手から熱烈に求められ愛してもらえる」ということでした。その後、複数人の女性と付き合いながら、淋しさや空しさをかき消していきます。そこにあるのは、相手への想いではなく、自己愛でした。

 そしてある日、別れ話がこじれ恋人が自殺未遂を起こします。それは「もう私が死んじゃってもいいんでしょ」という恋人の言葉に「キミが死にたいと想うのなら僕にはそれを邪魔する権利はないと思うよ」と返してしまったからでした。自己愛のみで生きていた小池氏に、恋人に注ぐ愛情はなかったのです。


 大学卒業後、実家がお寺だったこともあり小池氏は、坐禅瞑想などの修行によって自分をコントロールできるようになり、湧き出す感情の奴隷という状態から抜け出したといいます。そして、現在は現在、僧侶として月読寺の住職をしながら「家出空間」というウェブページを運営しています。

 「孤独は当たり前の事実」「自分を大きく見せたいと思っても、苦しみを連鎖させているだけ」と言う小池氏。もちろん全ての煩悩から脱却できたとは言えません。「評価されたい」「愛されたい」という想いは今でもポンポン出てくるといいます。
 『人間失格』の最後、葉蔵は廃人同様となり悲惨な結末を迎えますが、本書を読んでいると、『人間失格』のもう1つのエンディングを見ているかのように感じます。

 「いつも何か満たされない」「本当の自分がどこにあるのか分からない」と悩んでいる人はその感情から抜け出せるヒントがどこかにあるかも知れません。
(新刊JP編集部/金井元貴)

【関連記事】  元記事はこちら
合コンで気になった女性から電話番号を聞く方法
終電を逃がしたとき、宿がとれないとき…困ったときの野宿法
長生きするための7つの習慣
実は勝ち組だった「のび太」

【新刊JP注目コンテンツ】
小池龍之介『坊主失格』特集ページ
中2病だった僧侶/『坊主失格』新刊ラジオ