就職「超氷河期」は誰の責任なのか?

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 大学生の就職難といえば、1990年代半ばから2000年代半ばまで続いた就職氷河期が記憶に新しい。バブル期に浮き足立ってカネを使いまくっていた企業は、その崩壊とともに徹底した支出の削減を試みる。もちろん人件費も大幅に削られたことから、新卒採用が激減した。

 その結果、高校や大学を卒業しても、正規雇用として仕事をする場がなく、非正規雇用者として働く若者が急増する。日本の社会が経験した深刻な社会問題ともいえるこの就職氷河期に、日本の社会はいったい何を学んだのだろうか。

 1月18日、厚生労働省と文部科学省は、この春に卒業を予定している大学生の就職内定率(2010年12月1日の時点)が、1966年に調査を開始して以来、過去最低の68.8%であることを発表した。あの就職氷河期よりも厳しい就職事情が、若者に待ち受けているのである。いわば、就職「超氷河期」の到来だ。

 こうした状況を安直に「自業自得だ」などと言い、若者の自己責任と結びつける議論がある。そういうことを平気でいえる人には、仕事を持つ安定した者が、上から目線でものをいうのもいい加減にしろ、と言いたい。

 就職前の大学生には、どう転んでも就職先を生み出すことなどできない。それを生み出すべきものは、企業であり、政府だといえよう。とはいえ、民間企業は景気の動向によっては雇用者数の増減があるのは、やむをえないことでもある(だからといって、企業の「社会的責任」を考えれば、厳しいから何もしなくてよいというわけではないが)。

 そうなると、若者の就職事情を安定させるためには、政府による雇用対策がもっとも重要なものになってくる。厚労省は、「次代を担う若者の雇用・生活の安定を図るため、正規雇用化を支援します」とした上で、「若年者雇用対策」として「1.新卒者・既卒者などの就職支援に関するこ と」と「2.フリーターや若年失業者などに対する就職支援に関すること」(以上、厚労省ウェブページより)を推進すると明言している。

 昨年の秋からは、「卒業後3年以内の若者」を正社員にした企業には、給付金を出すなどの対策を実現しているが、いずれも後手にまわった対策ではないか。問題が起きてから、対処するだけ。政府が就職氷河期の経験から何も学んでいないことがうかがわれる。場当たり的といわれても、仕方がなかろう。大学生の就職事情がこれほど逼迫する前に、景気対策を実行して雇用の間口を広げるなど、事前にやれることはあったはずだ。

 また、小学から大学までの教育課程に、自分がどんな仕事に興味があるのかを考えたり、どんな仕事に向いているのかを探るような機会が、あまりにも少なすぎるような気がする。何がやりたいのかがはっきりしないまま、大学を出たらトコロテンのように就職しろといわれても、困る学生が多いのは当然である。

 この点も、若者の自己責任で話を終わらせる人が多いが、将来のやるべき仕事に関心を持たせるような教育課程を準備するのは、若者自身ではなく政府・文科省なのである。ここ数年は、「ゆとり」世代と呼ばれる学生が大学を卒業し、就職することになる。おそらく、就職難の原因を、「やはり、ゆとり世代は…」などと短絡的に語る輩も現れるであろう。

 だが、「ゆとり」教育を実行したのは文科省だ。その教育をうけた学生たちが「ゆとり」のレッテルを貼られ、小馬鹿にされる理由などない。もう一度いうが、昨今の就職「超氷河期」をまねいたおもな原因は、若者にあるのではなく、先を見越して対策をねらなかった政府にある。そういう意味では、こうした事態をまねいた責任は、民主党のみならず、旧政権の自民党や公明党にもおよぶ。

 政策を立案し、決定するレベルの人物は、一度、不安な気持ちでこの時期を過ごしている大学生の声を、聞いたほうがよいのではないか。リアリティがないまま決定される政策によって、「我が国の将来を担う若者が安心・納得して働き、その意欲や能力を十分に発揮できる社会の実現」(同ウェブページより)を進めることなどできないのだから。

(谷川 茂)

参考リンク:
厚労省ウェブページ

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