1月17日に発表された第144回(平成22年/2010年下半期)芥川龍之介賞・直木三十五賞は、両賞とも2作受賞(綿矢りさ・金原ひとみ+江國香織・京極夏彦の第130回以来7年ぶり)。
 芥川賞は朝吹真理子「きことわ」と西村賢太「苦役列車」、直木賞は木内昇『漂砂のうたう』と道尾秀介『月と蟹』に決まった(ついでに言うと、本誌記者の「テッパン予想」は、4作中3作まで的中。「両方はずしたら丸刈りにする」とラジオ番組で公言していたので助かりました)。

 東京・日比谷の東京會舘で行われる恒例の受賞者会見は、今回、史上初めてニコニコ動画「ニコニコ生放送」がライブ中継。歌人の枡野浩一を解説者に迎えて、記者会見場から受賞作発表の速報を流し、記者たちと一緒に受賞者の到着と会見を待つという番組スタイルで、総計46,480人の観覧者を集めた(プレミアム会員になれば、現在もhttp://live.nicovideo.jp/watch/lv37392022で録画をタイムシフト視聴可能)。
 当欄でも報じたとおり(http://www.webdoku.jp/newshz/ohmori/2010/06/28/110322.html)、昨年6月には、新潮三賞(三島由紀夫賞・山本周五郎賞・川端康成文学賞)贈賞式の「ニコ生」中継が実現しているが、このときの来場者数は3,694人。時間帯の違いを勘案しても、芥川賞・直木賞に対する関心の強さが実証された格好だ。

 今回は話題性の高い受賞者が複数出たこともあって、記者会見場はいつも以上の大混雑。とりわけ注目を集めたのは初候補で初受賞を果たした「きことわ」の朝吹真理子。作品に現実の出来事が反映しているのかどうかを問われて、
「今回は"言葉によってウソを完遂すること"がテーマだったので、100パーセント架空です。跳び箱のジャンプ台のようなものとして、実際に訪れた場所である葉山という土地を舞台に選びましたが、小説の中で起きることはすべてフィクションです」

 それと対照的に、「小説の中の出来事のうち9割は実際にあったこと」と答えたのは西村賢太。発表をどこで待っていたのかの質問に、
「自宅で待ってました。そろそろ風俗へ行こうかと思ってたら電話がかかってきた。行かなくてよかったです」
 と、のっけから場内を爆笑の渦に叩き込む。その後も、
「藤澤清造の私小説を読んで、自分よりダメなやつがいると思って救われた。僕の小説を読む人も、自分よりダメな奴がいるんだなあと、ちょっとでも救われた気分になってくれたらうれしいですね」などと発言し、ニコ動では一躍、"ダメ人間"のヒーローに。メディアからの出演オファーも殺到しているらしい。

 ちなみに、会見を終えて出てきた西村氏に「おめでとうございます」と挨拶したところ、間髪入れず「丸刈りにしてください!」の返答。す、す、すみません。予想を外したのは「苦役列車」だけなので、刈り上げくらいで勘弁してください。

 芥川賞の両受賞作はともに文芸誌《新潮》初出。どちらも今月中に単行本化が予定されている。

 直木賞受賞作2作はさっそく飛ぶように売れて、店頭ではすでに品薄になっている模様。両賞合わせて4作受賞の大盤振る舞いで文芸書売り場が活気づくことに期待したい。

 なお、直木賞受賞の道尾秀介にはこの日もTBS「情熱大陸」のカメラが密着。半年間の密着取材の最終日だったとか。この日の模様は1月23日午後11時からの放送回で流れる予定(http://www.mbs.jp/jounetsu/)。
 編集者や作家仲間を交えて午前3時過ぎまで続いた道尾秀介受賞祝いの会を締めくくったのは、主役のこんな挨拶だった。
「デビュー当時から僕は『もってる、もってる』と言われ続けてきました。そして今日、僕がなにをもっているかわかりました。それは......才能です(笑)。......いろんな作家の中で、僕ほどひとに育てられる才能をもっている作家はないと思います。ありがとうございました」

(大森望)







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