社会生活も送れない―“加害者の家族”を襲う呪縛と苦しみ

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 1つの事件が起きたとき、主にクローズアップされるのは被害者と加害者です。しかし、それぞれの裏にいる家族や友人、関係者たちもその事件の呪縛に苦しむことになります。

 幻冬舎から出版されている『加害者家族』(鈴木伸元/著)は加害者の家族が社会的に追い詰められていく実態を明かす一冊です。本書からあるケースをご紹介します。

 年下の夫と小学校低学年の息子と3人暮らしをしていた30代半の洋子さん(仮名)の人生はある日突然崩壊します。夫が殺人事件の犯人として逮捕されたのです。詳しいことは何も知らされず、夫から聞いた言葉はたった一言、

「ごめん……あの事件、本当はおれがやったんだ」。

 それ以降、洋子さんは自宅に帰れなくなります。洋子さんの自宅や職場、子供の学校、近所の家など昼夜問わず容赦なくマスコミに追われ、「人殺し!」と罵倒するような嫌がらせの電話が殺到しました。自宅に書かれた落書きも「人殺しの家」。インターネットでは「息子も抹殺しろ」という書き込みがされることもありました。

 結果的に洋子さんは離婚し、夜逃げ同然に自宅から引越しします。子供は、身元がばれるのを防ぐために2回も転校しました。夫の借金と、自宅のローンの返済を洋子さんが一人で返済しなければならず、精神的にも経済的にも苦しめられているのです。

 洋子さんは、被害者の方には本当に申し訳ないという気持ちが半分、しかし一方では私に何ができたのだろうか、という気持ちがあると言います。そして、幼い息子には責任がないと考えています。

 加害者関係者は、誰がどこまで責任を負えばよいのでしょうか。 
 『加害者家族』によると、加害者家族の場合は社会的に追い詰められていく傾向が強いそうです。身内の犯罪を機に職を失ったり、何度も引越ししたり、子供は転校させられ、離婚や自殺をする人もいます。嫌がらせに怯え、通常の社会生活すら送れなくなるのです。

 被害者家族の苦しみがもっとも大きいのはもちろんですが、このような知られざる状況を知ることは、犯罪抑止のきっかけになるのかもしれません。
(新刊JP編集部/川口絵里子)


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