出版界、本当の不況は「これからくる」

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 ここ最近、気になるのがテレビのニュースやドキュメンタリー番組で「電子書籍」の特集をよく見かけることだ。
 昨年10月18日にNHKの「クローズアップ現代」、12月9日にテレビ東京の「カンブリア宮殿」、そして今年に入ると1月6日にテレビ朝日の「報道ステーション」といった番組で電子書籍が取り上げられている。

 そして、これまで電子書籍について語られるときに必ずといっていいほどついてまわるのが「出版不況」というキーワードだ。
 出版科学研究所のデータによれば、日本の書籍販売部数は9億4379万冊を記録した1988年をピークに減少しているが、2001年頃から多少の上下はあるものの、2009年まではほぼ横ばいとなっている。

 しかし、出版業界紙「文化通信」の編集長である星野渉氏は『生き残るメディア 死ぬメディア』(まつもとあつし/著、アスキー・メディアワークス/刊)において、「本当の意味での出版不況は“これから”やってくる、というのが正しい認識」であると指摘している。
 その1つの根拠として星野氏があげるのが、取次(出版と書店の中継ぎをする流通業者)の「配本規制」である。取次が配本の規制をはじめており、これまでのように大量の新刊本を流通させて売り上げを確保することが難しくなっている。
 これは、書店の床面積の増減と大きくする。店舗の床面積が増えればもちろんそれだけ並ぶ本も増える。しかし、2009年に減床面積が増床面積を2003年以来6年ぶりに逆転。それだけ流通する本の部数も減るというわけだ。
 これまでの出版業界は取次が支えている部分が大きかった。星野氏は「消費者が求める商品を仕入れて流通させるという本質に立ち返ることができるかどうかが問われています」と提言する。

 そして、著者のまつもと氏は星野氏の言葉を受けて、「電子出版」と「出版不況」はセットではないと分析する。上記のような既存流通の仕組みの歪みは、電子出版とは関係ないものであり、またそもそも特に雑誌においてはメディアとしてのニーズが根底から問われている状態だと指摘する。

 『生き残るメディア 死ぬメディア』はウェブサイト『ASCII.jp』に連載されていた『まつもとあつしの「メディア維新を行く」』『動画サイトってどうなの? 儲かるの?』の一部を加筆・修正をした上で再編成し、新書化したもの。星野氏をはじめ、ボイジャーの荻野正昭氏、ドワンゴの夏野剛氏などへのインタビューのほか、またまつもと氏の分析も織り交ぜられており、メディアの現状を知る上で本書は参考になる。
 昨年は「電子書籍元年」といわれ、電子書籍用端末なども次々にリリースされたが、実際には表立って流行したとはいいがたい。しかし、徐々にではあるがメディアの形は変わりつつあるといえよう。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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