有名作家が自らの子どもの名前に込めたメッセージとは?

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 子どもの名前には、親なら誰もが頭を悩ませます。どのような人間に育って欲しいか、どのような想いを託したいか。名前は親からの最初のプレゼントといっても過言ではありませんし、ほとんどの場合、その名前と一生付き合っていかなければいけないのですから。

 では、作家や経営者、著名人たちは、自分の子どもたちにどのような名前を与えてきたのでしょうか。様々な名づけのエピソードが語られている『著名人名づけ事典』(矢島裕紀彦/著、文藝春秋/刊)から紹介します。

■子どもたちへの応援メッセージを名前に込める
 明治から大正にかけて活躍した作家・有島武郎は、妻・安子との間に生まれた3人の自らの子どもたちにそれぞれ、行光、敏行、行三と名づけました。
 3人に共通するのは「行」の字ですが、これには有島から子どもたちへの応援メッセージが込められていると著者の矢島氏は述べます。それがうかがえるのが、有島が子どもたちに言い聞かせるような筆致で書いた『小さき者へ』です。その『小さき者へ』の末尾はこんな文でしめくくられています。

 “……前途は遠い。而して暗い。然し恐れてはならぬ。恐れない者の前に道は開ける。
 行け。勇んで。小さき者よ。”


 行け。勇んで。「行」の文字を名前に入れた、有島の強いメッセージを受け取ることができます。

■辣腕経営者が子どもたちにつけた名前
 強引な買収を繰り返す一方で、優れた経営手腕を発揮。東急グループの創立者として知られる五島慶太が、2人の子どもに名づけたのが「昇」と「進」です。2文字合わせて「昇進」…というのはもしかしたら偶然なのかも知れませんが、矢島氏は「いかにも辣腕実業家にふさわしいものだった」と評しています。

 五島は「強盗慶太」のあだ名でも知られていますが、家庭ではやさしい父親だったそうです。また、男児2人のほかに、女児が2人いますが、それぞれ「春子」と「光子」と名づけており、温かさや明るさが伝わってきます。

■徹底したこだわりを見せた軍人
 一昨年からNHKでドラマ化されている『坂の上の雲』の主人公といえば、秋山真之です。軍人として名をあげましたが、若い頃は幼馴染みの正岡子規らとともに文芸の道を志していたこともあり、名文家としても知られていました。
 そんな真之は名づけにあたり、明確な基準を立てていたそうです。それは幼い頃から覚えやすいように字画が少ないものとし、そして左右対称の漢字を使うことです。そうしてつけられたのが「大(ひろし)」、「固(かたし)」、「中(ただし)」、「少子(わかこ)」、「全(やすし)」、「宜子(たかこ)」です。「少子」のみ左右非対称ですが、これは「小」の字を嫌ったからなのだそう。
 軍人らしい真之の徹底ぶりが子どもの名前からうかがえます。

 『著名人名づけ事典』には作家や歴史上の人物、学者などを533人の名づけを網羅していますが、そのいずれも子どもたちに何かしらのメッセージを託していることが伝わってきます。
 もし、名づけに迷うことがあれば、様々な偉人たちの名づけの理由を参考にしてみるのもいいのかも知れません。そして子どもから名前の由来を聞かれたとき、親として胸を張ってその意味を答えたいものです。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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