失敗から生まれた「フェイスブック」の“実名性”

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 2011年の日本のウェブの主役と目されているのが「フェイスブック」だ。
 2010年のサイト訪問者数がグーグルを超えたアメリカをはじめ、多くの国でSNSのシェアでトップを誇り、日本でも既に300万人以上の会員がいるという。本日15日からは「フェイスブック」の創業物語を描いた映画『ソーシャル・ネットワーク』が公開されており、普及の後押しになるか注目を集めている。(映画情報は http://cinema.modelbk.com/blog/391 から)

 そんな「フェイスブック」を特徴付けるのは実名性だ。実名でないアカウントは停止処分とされることもあるという。しかし、日本のソーシャル・ネットワークは基本的に匿名性の中で発展をしてきた。故に、実名を使う「フェイスブック」は日本では根付かないのではないかという声も多いが、どうして「フェイスブック」は実名性にこだわるのだろうか。

 アメリカのジャーナリスト、デビット・カークパトリック氏によって執筆された『フェイスブック 若き天才の野望』(小林弘人/解説、滑川海彦、高橋信夫/翻訳、日経BP社/刊)を読むと、その裏には開発者であるマーク・ザッカーバーグ氏のある“失敗”があることが分かる。

■「フェイスブック」前夜の「フェイスマッシュ」の失敗

 あるとき、ハーバード大学に通っていたザッカーバーグは、ある女子学生に対して憤慨。そしてそのウサ晴らしをするために“学生たちをいろいろな家畜になぞらえる”というソフトの開発を思い立つ。
 しかし、ルームメイトであるビリー・オルソンが学生を動物になぞらえるのではなく、他の学生と学生を比較する方が面白いのではないかと提案。ザッカーバーグは約8時間の開発時間を経て「フェイスマッシュ」というサービスを立ち上げる。

 「フェイスマッシュ」とは2人の同性の人物の写真を示し、どちらがよりホットな人間かをユーザーが投票して、キャンパスで誰が最もホットな人間かを決めるというもの。勝ち抜け方式で、勝てばさらにホットな人物との対決が用意されている。
 「フェイスマッシュ」は瞬く間にキャンパス内で話題となるが、使用している写真は学内の身分証明写真であり、もちろん無許可。非常に頑固で騒ぎを起こすのが好きな気質だったザッカーバーグは何かをする前にいちいち許可を取ることを嫌がった。

 学生団体からの抗議を受けたザッカーバーグは大学の査問委員会に召喚され、謹慎とカウンセラーとの面談を要求されてしまう。

■「フェイスマッシュ」の失敗を取り返すために

 その後、小さなウェブアプリを開発し続けていたザッカーバーグは、2004年2月4日、ついに「ザ・フェイスブック」(「フェイスブック」と名前が変わるのは2005年9月から)をオープンさせる。

 当時、ハーバード大学内では、写真入りオンライン学生名簿のニーズが高まっていた。しかし、大学当局は法的なトラブルが起こることを危惧しており、なかなか行動には移さなかった。そこで、ザッカーバーグが出した考えは、ユーザー自身に自分の情報をアップロードさせるというものだった。つまり、ユーザー自身に情報をコントロールさせたのである。

 ザッカーバーグの「フェイスマッシュ事件の失敗で評判を悪くしたので、それを取り返そうと思った」という言葉の通り、プライバシーに関して非常に気が遣われている。ハーバード大学のメールアドレスを持っていないと登録できず、必ず実名で登録を行わせ、さらにプライバシー機能を用いて自分の情報を誰に対して公開できるか設定できるようになっていたのだ。
 それまで、アメリカでも現在の日本と同様「匿名で何でもあり」というソーシャル・ネットワークが先行していたが、「ザ・フェイスブック」のこの性格は明らかにそれとは違った。

 また、「フェイスブック」のプロフィール欄に「恋愛対象」の欄があるのも、大学という若者が集う場所からスタートしているからだと言えよう。なぜなら、発足当初の話題は若い男女の性的関心をめぐるものが主だったからだ。

 映画ではザッカーバーグが社会現象を巻き起こし、時代の寵児となるまでのストーリーとその暗部がえぐられているが、そのはじまりは彼自身の失敗であるとも言える。読み手は1つのサービスを育てるということがこれほどまでにドラマチックであるとは、と思い知らされるだろう。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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