紀伊國屋書店 新宿本店 ピクウィック・クラブさんに聞く『思わず表紙買いしてしまうかも? 装丁が素晴らしい3冊』
 世の中にはあんな本やこんな本、いろんな本がある。そのテーマも十人十色。「感動したい本が読みたい!」「思いっきり怖い本を味わいたい」と思っても、 どんな本を選べばいいのか分からない! とお悩みの方も多いはずでは?
 そんなときにあなたの味方になるのが書店員さんたちだ。本のソムリエ、コンシェルジュとしてあなたを本の世界に誘ってくれる書店員さんたち。
 そんな彼らに、テーマごとにお勧めしたい本を3冊答えてもらうのが毎週水曜日に配信する、この「わたしの3冊」だ。【「わたしの3冊」バックナンバーはこちらから】

 さて、2011年一発目のテーマは『思わず表紙買いしてしまうかも? 装丁が素晴らしい3冊』! 今回は紀伊國屋書店新宿本店の書店員さんたちによって結成された文学愛好サークル「ピクウィック・クラブ」さんが登場。どのような本を選んだのだろうか?

◆『雷滴 その拾遺』

著者:平出隆
出版社:via wwalnuts
定価(税込み):777円

装丁自体はとてもシンプルだ。真っ白な紙に薄く書かれた題字と著者名。傍らに小さなイラストがひとつだけ。
この本の斬新かつ魅力的なところは、そのシンプルさを活かすような本の造りそのものにある。
本というほどの厚さはない。冊子ほどの薄さだが、その冊子は封筒に入っている。そして、封筒それ自体が冊子の「表紙」になっており、中の冊子は糸も糊もホチキスも使わずに、ただ二枚の薄い紙をかみ合わせて綴じてある。不思議な存在感で、とても美しい。
紙の持つ力、そして読書という行為の「親密さ」を強く感じることができるこの一冊は、『猫の客』などを書いた小説家で詩人の平出隆が発行する「via wwalnuts叢書」の第一号である。
この叢書からはつづいて、『澁澤龍彦 夢のかたち I』『澁澤龍彦夢のかたちII』が出ている。いずれも、紙の本への愛と可能性を信じる者が生み出した、出版界からのささやかならぬ贈り物である。


◆『ラナーク―四巻からなる伝記』

著者:アラスター・グレイ、翻訳:森慎一郎
出版社:国書刊行会
定価(税込み):3675円

装丁は本を選ぶ際の基準となる大事なものだ。店頭で初見の作家や作品と出会った時、その本を買うか買わないかを決める要素となる。
そして装丁が良い本は内容が伴う場合が多い。きっと装丁に携わった人が、その作品を読んでみて感じた強い思いが装丁に込められるのだろう。
今回お勧めする『ラナーク』は、もしかしたらその究極系と言ってもいい。その装丁に使われている画は著者アラスター・グレイ本人が描いたものなのだ。
ただ残念ながら四巻からなるこの本、始まりがいきなり第三巻である上に、著者近影も悪ふざけとしか思えない自画像が二つ。
こうまでされると本人が描いたという画も甚だ信じ難い。そしてそのうさんくさいカバーを取ったら…続きは是非店頭で確かめて下さい。


◆『烏有此譚』

著者:円城塔
出版社:講談社
定価(税込み):1575円

『烏有此譚』で思い出したのは同著者の『後藤さんのこと』(早川書房)の帯の方がよっぽど強烈だったということです。帯にグリッドがしかれ、それぞれのマスには文章が、折りたたむと豆本のできあがりという逸品。
でも今回は『烏有此譚』を紹介しようと決めていました。装丁が素晴らしい本ということで、あとは実物を見てもらい描写能力の乏しさに変えていただきたく思いますが、何故この本を選んだのかについては説明がいるでしょう。当然それも本を読めばわかることしか書けないので、まずは一読をお勧めしておきます。
ここでは装丁を表紙デザインのみを差す言葉ではなく本書の物質的側面一般と拡大解釈し、さて一体どんな装丁にしようかという構想の段階では単純に考えて編集者、装丁デザイナー、著者の最低でも三人が意思疎通を図っているさまが想像されます。表紙デザインから、段組から、使う紙からなんやかや。
本書には外箱がついていて、一般的な外箱は一方の口が塞がっている(洞窟みたいな)つくりだと思うのですが、この本のものは(トンネルのように)貫通しています。箱は灰地に白の半円、本体は黒字に赤の半円が描かれ、取り出していくとひとつの円が象られます。表紙は和紙っぽく、頁は藁半紙風味。開けばテキストは二段組みで、上段には小説、下段には注が施されています。
こういったつくりにはすべて意味があり、というのはそういう小説なので、こういう装丁になりました、という必然性がきちんと小説に包括されているのです。装丁も含めてひとつの小説・作品であるということが体現されているのだと小説を読んだあとに気づける点で、本書の装丁は良い仕事をしていると思い、思った通りの同語反復気味な紹介をこの場でさせていただきました。
いや本当にこういう遊び心に端を発した英断でいろんな本を作ってくれると本棚が楽しくなると思います。カバー掛けがまあ、煩雑になってしまうんですが。


◇   ◇   ◇

【今回の書店】
紀伊國屋書店 新宿本店

今回ご協力いただいたピクウィック・クラブさんは紀伊國屋書店新宿本店の書店員さんたちによって結成された文学愛好サークル。昨年4月には「ワールド文学カップ」と題した大規模フェアを展開するなど、精力的に活動中。

住所:東京都新宿区新宿3-17-7
TEL:03-3354-0131
FAX:03-3354-0275

■アクセス
JR新宿駅東口より徒歩3分、 地下鉄丸の内線・副都心線・都営新宿線「新宿三丁目」B7、B8出口より徒歩1分(地下道より直結)

■営業時間
10:00AM〜9:00PM

■ウェブサイト
http://www.kinokuniya.co.jp/

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