製品の裏側に隠された“特許”をめぐる争い

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 ビジネスの現場の当事者でない限り、「ビジネス」と「特許」の関係はなかなかイメージしにくいに違いない。しかし、その関係は実はかなり強く、携帯電話やカーナビには、数千にも及ぶ特許が含まれているという。

 例えば、特許庁のウェブサイトに掲載されている「携帯電話機の全体構造の代表的な特許」を見てみると、携帯電話の「折りたたみ」の原型と思われる特許が1988年に既に三菱電機によって出願されていることがわかる(T-12「携帯用折たたみ式無線電話」)。
 さらに、折りたたみ式電話機のカバーを片手で開けるという操作性を改善した特許は1993年に日本電気が出願していたり(T-29「折畳み式携帯電話機」)、他にも様々な特許が連なっており、製品を製造する上で特許は欠かせないものであることが容易に分かるだろう。

 そして、企業の裏側では、この「特許」をめぐって熾烈な争いが繰り広げられているという。

 タイトルから出版されている『パテントトロール―特許マフィアに狙われた日本企業の行方』は、“パテント・トロール”と企業の攻防が描かれたビジネスノベル。知的財産の専門家である石橋秀喜氏によって執筆されている。

 本書によると“パテント・トロール”とは、「自らが保有する特許権を侵害している疑いのある大企業を見つけ出し、それらの企業に特許権を行使して巨額のライセンス料や賠償金を得ようとするが、自らは当該特許権を実施した製品を製造していない者を指す英語の蔑称」(p11)であるという。つまり、お金を企業から巻き上げる目的で特許を取得する人々のことで、個人発明家や企業などから安く特許を買い集め、いつでも行使できるようにポートフォリオを構築している。

 企業にとって厄介なのは、パテント・トロールが自分たちで製造・販売を行っていないという点にある。通常、企業間で特許を侵害するようなことが起きたとしても、こじれるとお互いに不利益になることが多いため、最終的には友好的にライセンス交渉をしたりするなど円満に紛争を解決しようとするという。
 しかし、パテント・トロールは違う。いくら反撃されても製品の製造・販売の中止に追い込まれるというリスクがなく、強気に出ることができるのだ。

 知的財産の世界に難しいイメージを持っているかも知れないが、本作では特許紛争を通して、その世界の内実や問題点を抉る。フィクションとはいえ、そのリアリティはまさに現場を見てきた石橋氏ならではものだ。

 私たちが何気なく使っている製品1つをとっても様々な特許が含まれているが、その裏にある世界を垣間見るのも、いいのかも知れない。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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