北沢俊美防衛相は10日、金寛鎮(キム・グァンジン)国防相との会談で、燃料や部品といった軍需物資などを有償でやりとりする日韓の物品役務相互提供協定(ACSA=別項)の締結に向けた協議で合意しました。北朝鮮の動きをテコに、朝鮮有事をにらんだ周辺事態法改定を視野に入れた動きとみられますが、韓国内の世論や対中関係など、矛盾をはらんだものとなっています。

「戦時」型の危険

 「米国を中心に価値観を共有するオーストラリア、韓国が非常に重要。ぜひ我が国にとってACSA締結の3番目の国になってほしいと申し上げ、前向きに対応してくれた」

 北沢防衛相は10日、ソウルでの記者会見でこう述べ、ACSA協議は日米韓の軍事的な連携強化の一環であることを示しました。

 昨年3月に発生した韓国哨戒艦沈没や、11月の延坪島(ヨンピョンド)砲撃を受けて米韓両国は北朝鮮への強硬姿勢を強め、日本も同調してきました。

 昨年末に閣議決定された新「防衛計画の大綱」は、「地域における不測の事態」で米軍を支援するための「措置を検討する」として、朝鮮有事などで日本を自動参戦させる周辺事態法の改定を示唆。加えて、同じ米同盟国である韓国・豪州との協力強化を明記しています。

 韓国とのACSAは次回の日韓首脳会談までの締結を目指します。北沢防衛相は災害救助やPKO(国連平和維持活動)での協力関係を強調しましたが、日米ACSAも共同訓練など「平時」に限定していたものが、周辺事態法や有事法制の制定に伴い「戦時ACSA」へと段階的に改悪されました。日韓ACSAも同じ道筋を歩み、「戦時」型になる危険があります。

韓国内に慎重論

 しかし、侵略戦争の歴史問題を抱えながらの軍事協力に対しては、韓国内で慎重論が強いのも事実です。

 北沢氏は秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)も提起しましたが、韓国側は「ローキーで進めよう」と慎重な姿勢を示し、具体的な協議は先送りされました。これについて韓国紙「東亜日報」電子版は、「日本による植民地支配を体験した国民が、反感を持つ可能性があると判断するためだ」と指摘しています。

 北朝鮮による挑発行動や核・ミサイル開発をやめさせるという目標は、中国抜きには達成できません。

 関係者が一堂に会する6カ国協議は重要な機会であり、昨年11月に中国が6カ国首席協議の開催を提案したことは注目に値します。しかし、日米韓はこれに応じず、昨年12月6日に3カ国による外相会談を開催。同月8日にはマレン米統合参謀本部議長が日本に米韓合同演習への参加を促しました。

 これに対して中国は「緊張を生み、衝突を引き起こすことになる」(同月9日の外務省報道官会見)と反発しています。日米韓のさらなる軍事協力が、北朝鮮問題解決に、逆に障害をもたらす可能性もあります。(竹下岳)

 ACSA 米国が同盟国との間で軍事物資の融通や宿泊施設の提供などを行うために結んでいる協定。日本とは1996年に締結。当初は日米共同演習やPKOなどに限っていましたが、周辺事態や日本有事まで拡大し、イラクやインド洋への派兵でも適用されました。日本は昨年、豪州とも締結しました。

■関連キーワード