中国の米国債シャドートレーディング

写真拡大




今回はEiichirohさんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

中国の米国債シャドートレーディング
10月の“国別米国債保有高(米財務省)”で、日本(市場)の保有高は、8774億ドルと中国に次ぐ第2位になっている。
中国の米国債シャドートレーディング
MAJOR FOREIGN HOLDERS OF TREASURY SECURITIES『The Treasury Department and the Treasury』より
http://www.treasury.gov/resource-center/data-chart-center/tic/Documents/mfh.txt

目立つのは3位・イギリスの(保有高)急増だが、これは以前にも言ったように、イギリスが購入しているのではなく、実際には中国がロンドン市場を経由して購入している、といった中国のシャドートレーディング説 *1 が有力となっている。

*1:中国、第三国で米国債購入か 専門家『AFPBB News』
http://www.afpbb.com/article/economy/2701950/5402313

シャドートレーディング説とは、中国がロンドン・カリブ・香港市場で米国債を買い付け、それがそのまま、そこの国の保有高になって統計が出されているというものだ(購入市場=購入国保有)。

上の統計からは“2つの奇妙な事例”が確認できるが、それはそのまま中国のシャドートレーディング説を論拠づける(ように思える)。

1つは(元切り上げ声明を出した6月以降も)いまだに大規模な元売り・ドル買いでドルペッグレンジ *2 を維持する中国だが、その結果中国の9月末の外貨準備高 *3 は、前年同期比16.5%増の2兆6483億ドルに急増している。

*2:ドルペッグレンジ=中国の通貨・人民元とアメリカの通貨・USドルを連動させたもので、変動為替相場制とは違った固定相場制の1つ。08年以降1ドル=6.83元レートを2年間維持していたが、今年の6月からは若干の変動幅を設けた。しかし、実際にはほとんど変動幅はなく、今現在は、1ドル=6.6〜6.7元の位置(レンジ)にいる。ドルペッグレンジとは、固定させている若干の変動幅を意味する。

*3:9月末、中国外貨準備残高は2兆6483億ドル『新華社NEWS』
http://203.192.6.79/201010/aaa414133727_3.htm

しかしながら、その同時期の09年9月〜10年9月の(中国)米国債保有高を確認してみると、9365億ドルから8835億ドルに減少している。ドルペッグ維持の外貨準備は拡大し続けているにもかかわらず、(その結果の)保有米国債は減少していることになる。(ドルを買っての)外貨準備は16.5%増、米国債は5.66%減少といった奇妙な統計結果というわけだ。

そしてもう1つは、財政ガタガタのイギリスが、なぜか米国債保有を急増させているといった事実。 ここ1年(ちょい)の保有高でいうと、09年6月に908億ドルだったものが、10年10月末で4776億ドルと、いわば1年4か月で“5.26倍”の離れ業(あり得ない)。

以上の統計から、中国がロンドン市場で米国債を買い増ししている、という“広く知れ渡った疑惑”は合理的なものであり、現実的な話である可能性は高い。

米議会の討論会で指摘されたのが今年の春先であることを考えると、中国の実際の保有高は、1兆数千億ドルとなっているように思える。

ちなみに先日あった“FED *4 の米国債保有高が中国を抜いた”といった現実味のある報道を考慮すると、実際には違うということになる。

*4:FED=1913年の連邦準備法に基づいて創設された米国の中央銀行システムのことで、正式名称は「Federal Reserve System」。FEDはそれの略として使われることが多い。FEDはFRB(連邦準備理事会)と12の連邦準備銀行から成り立っている。また、FEDを指して単純に、FRBと呼ぶことも多い。

中国が海外ルートを経由して買い増す狙いとして、米議会で指摘されていたのは簡単なもの。

一言で言うと、「米国債保有国として、これ以上目立ちたくないから」 といったものだ。 大量の米国債を、これ以上保有するのは、米国の安全保障に影響を与え、米政府が中国と対立した状態では政策を実行しづらくなるのは明白で、露骨な政治戦略としての米国債大量占拠といったイメージを海外へ発信したくない、というのがその理由だそうだ。
中国の米国債シャドートレーディング
ここ1年の数字を見ても、確かに中国は9000億ドルを意識しているのが分かる。 見にくいと思うが、一番左が今年の10月で、9068億ドル。1年前の昨年10月が9383億ドル。その間、8000億〜9000億ドルをいったりきたりしている。

繰り返しになるが、人民元操作のドル買い・外貨準備急増を考えると、この推移はありえないわけで、中国の保有高がとん挫しているその間、(一番下の)イギリスの保有高が急拡大していることは、これらの疑惑を根深いものにしているといえる。

インフレ圧力を加えるアメリカと苦しむ中国
中国は現在ペッグ維持、ドル安についていくための元売り・ドル買いを積極的に実施している。米国の6000億ドルのQE2 *5 による影響は大きく、ドルとの通貨安の歩調を合わせるために、希薄化するUSドルに対して、人民元も希薄化させている、と言い換えることができる。

*5:QE2=FEDによる金融政策、量的緩和第2弾のこと。正式名称は「Quantitative Easing 2」。

元売り・ドル買いで、QE2に“マンマーク”。その結果、中国のマネタリーベースは増加し、インフレ負担も重くなっている。中国の状況は、ある意味アメリカ(政府)の目論見通りとなっている。

このことは以前のエントリー *6 でも触れたが、QE2は(中国に対して)資源高だけでなくベースマネーをも増加させ、結果的にアメリカは中国に対してインフレ攻撃を加えていることになる。

*6:FOMC前『ニューノーマルの理』
http://ameblo.jp/eiichiro44/entry-10691645876.html#main

その原理から考えると、預金準備率を操作・利上げといった“ポンピングブレーキ状態”の中国だが、インフレ退治をするならば、ドル買いの為替操作を止めなくてはいけないことになる。マイナス面が強調されがちなFEDのクイーン・エリザベスなんだけど、対中戦略としては着実に効いているというわけだ。

ユーロが反発、中国の欧州債務問題支援発言で『Bloomberg(ブルームバーグ)』
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=ag.gul66gvj0

海外ルートを経由してまで米国債を購入している中国だが、インフレ懸念が強まっている現在、そろそろドル資産から他へ目を移さなくてはならないのかも知れない。

執筆: この記事はEiichirohさんのブログ『ニューノーマルの理』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信

■最近の注目記事
さかなクンとクニマスのこと
東京国際アニメフェア2011で都条例問題を議論するシンポジウムを開いてはどうか
光の道 その誤謬(ごびゅう)と必死なのはなぜの話
都の青少年健全育成条例改正案が招く表現萎縮とはどんなものか
Viberが送信する情報のメモ