“人間の思考の不合理さ”を体験してみる

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 人はなぜイライラすると分かっていてレジ待ちをするのか? なぜ食事の時、好物を最後に取っておくのか? 損をするのが分かっていてもやってしまう様々な行動や判断のカラクリを解き明かすのが「行動経済学」という学問です。

 関西学院大学や同志社大学などの教壇に立ってきた行動経済学者、ハワード・S・ダンフォード氏によって執筆された『不合理な地球人 お金とココロの行動経済学』(朝日新聞出版/刊)は、<人間の行動はいかに不合理か><本当の合理性とはどういうことか>といったことをプロローグ、エピローグを含めた9つの章から解説していきます。
 今回は、本の中から、人間の不合理さを実感できる問題を紹介します。これから出す問題を一緒に考えてみてください。

【問題1】
ある館に、赤、青、黄の三つの扉がありました。
「そのうち一つの向こうには美女が隠れていて、その扉を当てたら美女と楽しいひとときを過ごせます。さぁ扉を選んでください」と主人は言いました。
あなたは思いきって中央の青い扉を選びました。扉はまだ閉まったまま。主人はこう言いました。
「私はどの扉が当たりか知っています。今回は特別に、あなたが選ばなかった扉のうち、美女がいない方を開けましょう」
主人は右の黄色の扉を開けます。中は空っぽです。
「残る扉は二つ。いずれかに美女は確実に隠れています。ここであなたにはもう一度扉を選び直せる権利があります。赤い扉に変えますか?それとも青のままにしますか?」
確率を前提にした場合、選び直すか、そのままにするか、どちらの方が得になるでしょうか?

【答え】選び直した方が得。
理由:変えないままだと美女がいる確率は1/3で、選び直すと確率は2/3になるから。


美女がいる確率は3つの扉とも1/3です。青い扉が当たりの確率は1/3、赤と黄の扉が当たりの確率は2/3になります。しかし主人が意識的に外れの扉を開けたことで、赤か黄色の扉の2/3の確率が、赤い扉が当たりの確率となり、青い扉の確率は1/3のままになります。よって、選び直した方が確率は2倍高くなり得なのです。

これは、扉の数を100枚にして考えると分かりやすくなります。当たりは1枚だから確率は1/100。次に当たりを知っている主人がハズレの扉を98枚開けてしまう。残ったのは1枚とあなたが選んだ1枚。どちらの方が当たる確率が高いか? あなたが選んだ扉の確率は1/100ですが、もう一方は99 /100となります。主人は意図的にハズレの扉ばかり98枚開けたからです。

選び直さなかった人もいるのではないでしょうか? よく考えれば当たり前のことですが、人間は案外不合理な方に寄っていってしまうようです。

【問題2】
あるギャングのボスには、仲の悪いトムとミックという部下がいます。あるときボスは2人にある方法でボーナスを出すことにしました。
「この20万円をボーナスとしてお前たちにやろう。ただし条件がある。まず20万を先輩のトムに渡す。分け前はトムが決めて、その分け前にミックが応じたなら取り引きは成立だ。20万はお前達のものだ。しかしミックが拒否した場合、取り引きは不成立になり2人とも何も得られない。さあ、好きに分けろ」
トムはミックにいくらで提示するでしょうか? ちなみに提示金額は1万円単位とし、提示のチャンスは1回、事前相談はできないものとします。、

【答え】
A、トムは五分五分ぐらいの額を提示するだろう。しかし、これは合理的とは言えない。


ポイントは<提案される側に拒否権がある>ということです。拒否されないためにも、トムはそれぞれ10万づつで提示する可能性が高いでしょう。しかし、合理的な判断をするならトムは1万円を提示するべきですね。つまり1万円と19万円という配分です。
1万円は少な過ぎると思うかも知れませんが、ミックは拒否してしまうと何も手に入らないのだから、これを受け入れるでしょう。1万でも得た方が明らかに得です。しかし分け前に差がありすぎると、提示を受ける側は不正な判断と見なし、損をするにも関わらず拒否権を発動させる可能性があります。それは提示する側も十分予測しているので、提示額は五分五分に近いものになるのでしょう。

山分けがベストだと思った人いましたか?
このように「相手の気持ちを考える」というのが時に合理的判断を邪魔したり、損をする選択に繋がったりするのです。

 『不合理な地球人 お金とココロの行動経済学』には、このような出題が全部で60問出てきます。
 問題を解いていくと、<誰もがよく選ぶ答えこそが不合理な行動>だというのが分かってきます。普通にしてきた判断で損してきたかもしれないと思うとちょっと複雑ですが、<感情や人情が働いてるから不合理な行動をとってしまう>とも言えるので、なんとも面白いものです。

 自分の行動や判断は果たして合理的か否か、この本で試してみてはいかがでしょうか?
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