同業他社に転職して、前職から損害賠償請求?
中途採用をしていると、同業界の方が面接にくることがあります。面接する側も業務の事を知っているだけに、ほかの人に比べて即戦力になると期待します。

応募者側も、仕事のだいたいのイメージが異業界よりつかめ、その業界が斜陽業界であったり、業界自体の体質が嫌で転職する以外の方、特に中小企業で経験を積んでから同業の大手へ…とステップアップする方にとっては、諸条件の向上も見込めるため、同業界を第一志望とする方も多いようです。

しかし、そこで発生するのが、退職する会社の就業規則や入社時や退職時に取り交わされた誓約書に「退職後○年間は同業他社に就職しない」という文言があった場合の問題です。大抵、違反した場合は「損害を賠償する」「退職金を返金する」などの文言も同時に書かれていることが多いようです。この規則や約束は法的に有効なのでしょうか。

就業規則に同業他社へ転職してはいけないと書かれています

質問者のmyaumyauさんは、今すぐ転職する意志はないようですが、入社前にはなかった規則で「同業他社へ2年間転職してはいけない」との規則が追加され、法的に転職してはいけないのかと質問しています。それに対して寄せられた回答は、

   「そんな就業規則なんてただの飾りですよ。当社でも同じ就業規則がありましたが当時の取締役が退任後数か月もしない内に、ライバル会社に転職していました。法的な裏付けなんてありません」(nonno36さん)

   「同業他社への転職そのものがダメという判例を見たことがあります。そういう制限に対する代償が給与に含まれていたとみなされたためのようですが、それが一般的なものかどうかは不明です。私の現在の勤務先にもそういう制約(入社時の同意書)がありますが、前任者たちは同業他社へ転職していきました。なんらおとがめなしです」(takopassさん)

と、問題はないとする回答が。

■同業他社への転職に制限はないが、注意すべきこと

就業規則や誓約書で競業禁止(同業他社への転職や、同業の開業)をうたう企業は多くありますが、まず憲法の「職業選択の自由」が優先されます。就業規則にいくら明記されていても、退職金の減額などはできません。また当社で得た知識等を他社に流用したとき損害を賠償しますと誓約していても、そもそもその知識が前職の職務でしか獲得できなかった企業秘密レベルのものでない限り、誓約は無効になります。

特に管理系・営業系の場合は、給与計算の知識などは汎用的ですし、営業ノウハウも顧客名簿を印刷して持ち出すなど、別の背任行為(窃盗罪)を犯していない限り、前職で培った人脈に声をかけるのも自由です。

しかし例外もあります。

   「ただし、注意しなければならないのは前職で知り得た会社の内部情報・技術情報等をペラペラしゃべって、それが元で転職先に有利になるような結果が出たとしたら(例えばマネをした新製品等)、これは訴訟対象となりえるので注意してください」(nonno36さん)

nonno36さんが書いているとおり、前職で企業秘密と知らされている情報を次の会社で漏洩(ろうえい)使用した場合です。しかしこの場合も企業秘密であることを明示されており、情報漏洩(ろうえい)の事実が明示的であり、かつ秘密保持に値する対価が給与として支払われていた場合に認められるか・認められないかの瀬戸際で、基本的に労働者優位にできています。給与が安いのに秘密を守れとはいえないのです。

また取締役に就任していた場合には、労働基準法が適用されないので、取締役が競業避止義務に違反してなした取引は、その会社が自分のためになされたものと一方的にみなす権利(介入権)が発生し、その取締役が営んでいるものはすべて前職に接収されてしまいます。退任しても取締役は、いろいろな義務を従業員よりも重く負いますので、注意が必要です。

桜井 規矩之左右(Kikunozou Sakurai) →記事一覧

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