河内敏光コミッショナー(2006年撮影)、写真:フォート・キシモト

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日本のバスケットボール界には、JBL(日本バスケットボールリーグ)とbjリーグ(日本プロバスケットボールリーグ)の二つのトップリーグがある。企業スポーツを母体とする前者に対し、クラブによる完全プロリーグとして運営しているのがbjリーグだ。

90年代後期、バブル崩壊後の業績不振により経費削減を余儀なくされていた企業は、自社のスポーツ部を次々に休部、廃部させていった。三井生命バスケ部時代に自身も廃部を経験した河内敏光氏は、一企業の論理でそのスポーツの運命が左右されてしまう企業スポーツというあり方に限界を感じ、bjリーグを立ち上げた。それはまさに、旧態依然とした体質を持つ日本バスケットボール協会との、決別ともいえるものだった。

bjリーグが創設されて今季で6シーズン目。発足当初6チームだったチーム数は16に増え、協会からリーグがようやく承認されたことで、選手たちの日本代表への道も開かれた。

ゆっくりだが着実に歩みを進めているbjリーグの現況と展望、そして総合型地域スポーツクラブの可能性を、河内コミッショナーに訊いた。

──今季は秋田ノーザンハピネッツ、島根スサノオマジック、宮崎シャイニングサンズと3チームが新たに加わりました。来シーズンは岩手、千葉、横浜、長野の参入が決定しています。このようにチームが増えていくことは予想していましたか?

河内コミッショナー(以下河内) 正直に言って、予想外でした。創設当初はチーム数が増えていくのか不安を持っていたのですが、我々の事務局体制の規模を超える数のチームが、新規参入に手をあげてくれています。地方のニーズがあったということですね。チーム運営費の面で、プロ野球球団は言うに及ばず、サッカーでもJ1だとチームによっては50〜60億、J2でも10億くらいはかかる。しかし我々は2億〜3億弱のビジネスモデルでやっているので、手をあげやすいということもあるのだと思います。

──地方のニーズが、予想外にたくさんあった。彼らが求める理由は何でしょう?

河内 僕はbjリーグ立ち上げの前に、新潟のアルビレックスで地方の熱をいうものを目の当たりにしました。新潟の人々にとって、アルビレックスはアイデンティティを呼び起こす存在になっています。地方の人たちというのは、そういうものを求めている気がしますね。逆に言うと、大都市は難しい。大都市に住む人々にとって、アイデンティティとなりうるクラブチームを作れるかどうか。今はまだ目指している段階ですが、チャレンジし続けていけば必ず道は開けると信じています。

──チーム数はどこまで増やしていくお考えですか?

河内 最終的には、47都道府県すべてにチームがある、というのが私の一つの夢です。しかし当面は24チームまで増やすことをめどに動いています。性急に事を運ぶのではなく、段階的に、じっくりと検証しながら47という数字に近づいていくイメージです。

──47に到達するには、越えなくてはならない壁がたくさんありますね。

河内 そうですね。まず今までのスポーツというのは、学校スポーツとか企業スポーツというように、どちらかというと公益的なイメージが強かった。だからそもそもスポーツでビジネスするということに対して、あまりいいイメージを持たれていないのですよ。しかし今、企業も一社で一チームを継続していくのは難しい時代に来ています。スポーツを継続するためには、やはりお金が必要です。ビジネスとしてお金がうまくまわる仕組みを、示していくことが必要だと思っています。

──サッカーのJリーグも、地域密着のクラブスポーツという理念と必ずしも一致していない現状があります。

河内 たとえば今年優勝した名古屋グランパスにしても、トヨタがいくら赤字を補填しているか。パナソニックのガンバもそう。しかしそれによって成り立っている現状もある。そういう意味では、すべてのチームをいきなり総合型地域スポーツクラブに変えていきましょうといっても難しい。世界に名だたる大企業がバックについてくれているチームもあるのですから、突然転向したところで、今までと同じ規模ではできなくなってしまう。それでまたチームがなくなったりしては、本末転倒ですからね。だから、そうした企業の方々にもメリットがあると感じてもらえるようなビジネスモデルを作っていかないといけない。

──ビジネスモデルを確立するにはどんなことが必要ですか?

河内 日本にスポーツが文化として成り立たない一つの要因として、この国にはアリーナがないということがあげられると思います。基本的に体育館しかないんですよ。屋内競技団体がメジャースポーツになれない一番の理由はそこにあります。だから僕は、アリーナを作りたい。今度、新潟の長岡に、新幹線を降りて1分のところにアリーナができます。仙台や沖縄でもそういう動きがあります。アリーナができれば、今度はアリーナビジネスというモデルを確立できる。たとえば、子どもたちはワンコインで入場できるようにする。その代わり、会場で2時間試合を観ながら、グッズを買ったり、飲み食いしたりして、1500円くらい使ってもらう。そうすると2000円になりますね。これがアリーナビジネスなんですよ。日本は公共の体育館だと、基本的に飲み食いできないのですが、僕はbjリーグを行うにあたり、それを全部説得して認めてもらうようにしました。そこで売るお酒は地元の酒屋さんが入れればいい。ゴミが出て大変だというのであれば、地元のゴミ回収業者に入ってもらえばいい。これは地域の経済効果になる、と説得したんです。

──その辺は、中央よりも地方の行政のほうが動きやすそうですね。

河内 そうですね。たとえば東京だと、東京体育館とか代々木体育館とか、いろいろあります。でも、いろんな競技団体が使っていて、スケジュールはいっぱいです。一番いい体育館の土日を、マイナースポーツ同士が取り合っているんです。午前中にバスケをやって、午後からフットサルをやって、最後にハンドボールとか、そういう風にやればいいと思うんですけどね。バスケが嫌いな人もいる、野球が嫌いな人もいる、バレーが嫌いな人もいる。でも、スポーツを嫌いな人っていませんよね。みんなが参加できる、そういうクラブチームを作りたいですね。

──ヨーロッパ型の総合クラブスポーツに近い形でしょうか。

河内 ヨーロッパ型でも、ビッグクラブは生きているけど、小さいクラブってけっこう大変です。翻ってアメリカ型のスポーツビジネスでは、NBAやNFLを見ていると、リーグが権利を一括管理していて、うまく分配している。日本のキーワードは何かといえば、「地域密着」だと思います。だから我々はヨーロッパ型のクラブスポーツでありながら、ビジネスモデルのところはアメリカを参考にすべきだと思っています。

──成功するという見込みはどれくらいありますか。

河内 bjリーグというアリーナスポーツは、僕が立ち上げました。だから極論を言えば、僕が失敗だと言わない限り失敗ではないと思っています。このままいけば、必ず成功すると思っています。バスケが成功したら、次は他のアリーナ競技団体と一緒になって、どんどんプロリーグを作っていきたい。バレーも卓球もハンドボールもフットサルも、みんな同じチーム名の下に、一緒にやればいいんですよ。それは何より、子どもたちのためです。僕が子どもの頃には、大相撲とプロ野球しかありませんでした。僕は子どもたちの夢と選択肢を増やしたいんです。

──そういう世の中になったらすばらしいですね。それこそスポーツ文化と呼べるものです。

河内 これは誰かがやらないと絶対に変わりません。すごく大変な作業であることはわかっています。でも、好きなことをやっているんですから、僕自身はすごく楽しいですよ。大好きなバスケをやっているんだから、こんなに楽しいことはありません。(了)

(取材・文/田中亮平)

2011年1月23日 大阪府立体育会館でオールスターゲームを開催!!
「マルコメ presents bjリーグ 2010-2011シーズン オールスター ゲーム in 大阪」
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