「江戸時代の雰囲気が楽しめる作品にしたかった」―桜庭一樹さんが新作『伏 贋作・里見八犬伝』を語る(1)

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 出版界の最重要人物にフォーカスする「ベストセラーズインタビュー」。今回は、新作『伏 贋作・里見八犬伝』を上梓した桜庭一樹さんをお招きし、インタビューを行いました。桜庭さんにとって初めて舞台を江戸時代に設定した本作。桜庭さんはどのような想いを持っているのでしょうか。また、本作は12月15日に電子書籍版がリリースされたほか、アニメ映画化のプロジェクトも進んでいるそうで、そちらについてもお話をうかがってきました。3回に分けてお送りしていきます。

■「江戸時代の雰囲気が楽しめる作品にしたかった」

―本作『伏 贋作・里見八犬伝』は、江戸時代に書かれた曲亭馬琴の『南総里見八犬伝』をモチーフとしていらっしゃいますが、この着想はどのようなところから得たのでしょうか。

「もともとは編集さんと歌舞伎を観に行った帰りに、時代物や伝奇物を書いたら面白いかもという話になったのがきっかけですね。
『里見八犬伝』は小学生の頃に薬師丸ひろ子さん主演の映画が流行していて、それを観ていましたし、本の方も読んで面白いと思っていたので、いつか書きたいという気持ちがありました」

―桜庭さんにとって、本作は初めての時代物となります。そういう意味では新しいチャレンジになると思うのですが、何か気をつけた点はありましたか?

「日本の時代物は今まで書いたことがなかったので、どのくらい専門的なことを書くのか、何を勉強したらいいのか、というところはありました。でも、もともと『GOSICK―ゴシック』という100年近く前のヨーロッパを舞台にした物語を書いていて、そのときはあまり専門的過ぎず、誰でも楽しく読める作品ということを念頭にお話を書いたので、今回も時代小説をあまり読まない人でも分かるような、江戸時代の雰囲気を楽しめる作品にしようとは思いましたね。だから、そんなに書きづらいということはなかったです」

―本作は『週刊文春』に連載されていたものを単行本化したものですが、物語の中に『贋作・里見八犬伝』という物語が入っているという構成が非常に独特であると思いました。もともと連載中はそういう構成ではなかったそうですね。

「もともとは『里見八犬伝』自体を最初から順番に書こうとしていたんですが、実際に書いてみると、『里見八犬伝』自体が非常に重くて長いということもあって、なかなかまとめづらいことに気づいたんです。
先ほど挙げた薬師丸ひろ子さん主演の角川映画版『里見八犬伝』って、本家の『南総里見八犬伝』の何十年かあとの子孫たちの物語で、実は全然違うアレンジが加えてあるんです。他にも、山田風太郎の『八犬傳』は、山田風太郎がアレンジを加えた『八犬伝』とそれを書いている馬琴の執筆風景が交互に入っていたり、平岩弓枝先生の『へんこつ』は馬琴が探偵役となって、江戸で『八犬伝』の登場人物っぽいキャラクターたちが出てきていろんな事件を起きたり…とすごくアレンジをされていらっしゃったので、何故だろうと思っていんですが、本作を書いていてそのことに初めて気づきました。
だから、『八犬伝』そのものの話を物語の中に入れて、最後の方に書いていた未来の話を最初に持ってくるという形で構成を変えたんです」

―それは単行本化する際に決めたのでしょうか。

「いえ、連載しているときからそういう構成にしようと思っていましたね」

(第2回:「伏姫にいないはずの弟をつくったら、物語が動き出した」は明日25日配信)

(新刊JP編集部:金井元貴、写真提供:文藝春秋)

■『伏 贋作・里見八犬伝』
著者:桜庭 一樹
出版社:文藝春秋
定価(税込み):1,700円

■桜庭一樹さんプロフィール
 1999年「夜空に、満天の星」(『AD2015隔離都市ロンリネス・ガーディアン』と改題)で第1回ファミ通エンタテインメント大賞に佳作入選。2003年開始の〈GOSICK〉シリーズで多くの読者を獲得し、2004年に刊行した『推定少女』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が高く評価されて注目を集める。2006年に刊行した『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞を受賞。2008年『私の男』で第138回直木賞を受賞する。近著に『荒野』『ファミリーポートレイト』『製鉄天使』『道徳という名の少年』などがある。


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