文芸界の“異端児”が描くマイケル・ジャクソン

写真拡大

 2009年6月25日、“King Of Pop”マイケル・ジャクソンが急死し、世界が悲しみに暮れた。ところが、その後、マイケルをテーマとした様々な書籍が出版され、一部のファンからは「マイケルを金儲けに使っている」という批判が飛び交ったことは記憶に新しい。

 あれから1年半、また新しいマイケル・ジャクソンをテーマにした1冊の本が登場した。本書もそれに乗っかった本であるのかと思いきや、世間のマイケル熱はずいぶん落ち着いており、状況はかなり違っている。

 執筆者は文芸界の異端児とも言われる清涼院流水氏。1996年、『1200年密室伝説』が第2回メフィスト賞を受賞し、『コズミック 世紀末探偵神話』と改題された同作でデビュー。しかし、その作風や構成はそれまでの推理小説界では前例のないものであり、物議を醸す。その後、小説だけでなく、ビジネス書やマンガ原作など幅広いジャンルで活躍している。
 そんな清涼院流水氏の新刊『キング・イン・ザ・ミラー』(PHP研究所/刊)では、マイケル自身を一人称に据えて、心の葛藤、苦悩、エンターテインメントへの執着をまざまざと描き出している。

 本作の特徴は、ノンフィクション・ノベルの体裁を取っていながら、ビジネス書、自己啓発書の要素をふんだんに詰め込んでいる点だろう。本作には成功のために必要な要素が、マイケルのエピソードを通して散りばめられている。
 例えば、本作の49ページにはこんな一文が掲載されている。

 成功とは、登山に似ています。がんばって頂上まで登ることはできますが、いつまでも頂上にとどまることは不可能です。下山する時は、必ずやってきます。
 ふたたび成功するためには、また新たな登山の準備を始めないといけないのです。


 表舞台に立ち、光を浴びるエンターテイナー。しかし、その裏には必ず影がある。それと同じように人間の人生そのものも、成功と失墜の繰り返しなのだ。本作でも、その「栄光」と「失墜」が色濃く表現されている。

 マイケルを知るたびに、その奇人・変人とバッシングされていたマイケルの姿は消え失せ、そして1人の人間としてのマイケルが浮き彫りになる。
 清涼院流水氏は「もともと熱心なファンではなかった」ということもあり、マニアック過ぎず、マイケルをそこまで知らなくても読みきることができる。今、壁にぶつかって悩んでいる人や、自分自身の殻を打ち破りたい人にとって、本作で描かれているマイケルが辿った「成功」と「失墜」のエピソードは、きっと参考になるだろう。
(新刊JP編集部/金井元貴)

【関連記事】  元記事はこちら
マイケル・ジャクソン本、評価の高さの基準は“MJへの愛”
かつての恋人が明かす“等身大のマイケル・ジャクソン”
現役京大生が小説家デビュー 村上千晃さんに聞く
ミュージシャンにしてマイケル愛好家の西寺郷太が描き出す“マイケル・ジャクソンの光と影”

【新刊JP注目コンテンツ】
ビジネスマン必読マンガを書店員さんが紹介!「ブクナビ」
個人に合わせた情報が手に入る「新しいメディア」 『スマートメディア』特集