【規制バスター】利用者がタクシーを選びやすいような工夫を ”政策工房”原さんが語るタクシー規制の問題点

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世の中いろいろとおかしな規制が存在します。そんなおかしな規制について一緒に考えてみませんか。毎回さまざまな業界の不思議な規制をご紹介する『規制バスター』シリーズ。今回は「タクシー業界」の最終回(3回目)です。前回はこちら。

●登場人物
原=原英史さん(政策工房)
ふかみん=深水英一郎(ガジェット通信)

●台数を減らせば監査にいきません、という見返り

原:次に“監査”について。ここにも再規制強化でそもそも言われていた目的と、実際やっていることとで全然違う部分が出てきています。まず、減車の話をしましょう。過当競争になっているから、車の台数を減らしましょうと、国が業界を誘導しています。

ふかみん:なぜ国が台数の制限するように言ってくるんですか?

原:過当競争のため、運転手さんたちが過酷な労働環境におかれ、安全上の問題も生じている・・というのが表向きの説明ですが、実際には、大手タクシー会社にとって利益になると見ることもできます。多少は自分たちも減らすけども余剰分を減らせばいいわけだから。一方で、元気のいい、新しい工夫をして乗り込んでくる新興勢力を排除できるわけです。

ふかみん:そんなことができちゃうんですね。

原:さすがに減車は義務付けではなく誘導していくことになっています。台数を減らせば恩典を与えますよ、というインセンティブをつける方式になっている。そのインセンティブの一つが何かというと、“立ち入りの監査にはいりません。”というものです。労働に関する規制、安全点検に関する規制などいろいろな規制がタクシー会社にはかかっていて、地方の運輸局は定期監査だったり抜き打ち監査だったり、タクシー会社にやってきて守っているかチェックするんですね。

ふかみん:それは伝家の宝刀な感じがしますけど、その監査って来るとめんどくさいものなんですか。

原:来たら、大変ですよ。違反が見つかれば、乗車停止とか処分を受けることもあるわけですから。業界にとっては、すごく嫌な、来ない方がありがたいものです。

ふかみん:そうなんだ。

原:で、今回の再規制強化の一環で「減車したら監査にいきませんから」と言ってるんですね。これって、もともとの目的から考えたら訳がわからない。労働条件、安全性を強化したいのにその監査をしないってどういうことなのか。

ふかみん:やってるうちに、目的を忘れちゃったとか。

原:いや、最初から考えてなかったのかもしれませんね。役所の人と、役所の人たちと表裏一体で仕事してる人たちは、たぶん本気で安全性を高めたいとか、労働者を守りたいって考えてるわけじゃなくて、新規参入を排除するとか、台数を減らすことしか考えてなかったんじゃないか。だから、こういう運用をしちゃうんだと思いますよ。そういう意味で、実は2008年に全会一致で法律が通ったときの元々の目的は全然関係なかったんじゃないか。国会議員の人はだまされたんじゃないか、ってことなんですね。

ふかみん:国会議員だませるってすごい勢いとパワーですね。

原:自民党も民主党もいきすぎた規制緩和論にのっかって、再規制強化につっ走ったんですが、裏事情はこういうことかもしれません。おそらく、自民党には政治献金をしているタクシー業界が、政治的な力を行使したんじゃないか。民主党に対しては、そういう会社の労働組合の人たちが労働組合として話をしたんじゃないかと。

ふかみん:一致団結して。

原:だから、たぶん民主党は役所にのせられてつくったとか全く思ってなくて、自分たちの支援者と一緒に、要望をきいて法律をつくったと思ってると思うんですけど、ほんとのところは、大手の会社の経営陣と労働組合の連合軍、更にそれをあやつる役所の人たちにうまくのせられていた可能性があります。

ふかみん:一番うしろであやつっているのは役所の人たちなんですか?

原:どっちが主導権もっているのかは何とも分からないですけど、天下りを通じて利益共同体になっていると思いますね。

●おかしな規制をひっくり返すことはできないの?

原:こういう再規制強化は2008年の段階ではのせられてつくったかもしれないけども、実際に起きてることは、ワンコインタクシーがつぶされて利用客が迷惑してる、料金があがる、最高乗務距離規制ができた結果乗車拒否される人が増えている、そういうみんなが迷惑している構図をあきらかにしていけば、変わっていく可能性はあると思いますよ。

ふかみん:利用者の声が集まっていけば変わるんでしょうか。

原:現状では、一部の政治的な力を持った団体の声ばかりが政策に吸い上げられて、よりたくさんいる利用者全般、広く薄い利益が反映されない構図になっています。どうやって、その広く薄い利益が集まって大きな声になるようにしていくかですね。

いきなり物事を動かすのは難しいですけども、例えばワンコインタクシーの話であれば、なぜだめなのか、という利用者としての声を集めて、担当大臣や関係議員、または地元の選出の国会議員に直接話をしに行ったり、手紙を書いたりでもいいわけですね。またはネットコミュニティでこれおかしいよね、と共有してみんなでメールを出すのも十分有効だと思います。

ふかみん:うんうん。

原:そんなことやっても意味ないだろ、とみんな思いこみ過ぎていて、だから、一部の力のある声が通っちゃう。

ふかみん:明確な利益がある人は声あげますよね。一般消費者は「なんかちょっと不便になったね」とつぶやいて終わっちゃう。

原:それを一歩踏み込んで「これおかしい」と言える場で言っていくか。物事が進んで、国会や政治の場面で政策を出せる局面になった時に後押しするとか。そういうことをみんなでできれば変わると思いますね。

ふかみん:「こうすればおかしな規制はなくなっていく」というところに踏みこんでいきたいですね。そうしないと読んでる人がすっきりしないかなって。

原:いろいろ手だてはあるんです。やろうと思えば、タクシーの話や床屋の話にしたって、へんな規制をなくす法案を国会にだすことだってできる。多くの声に支えられた法案ですと政党にもっていく、ということもあり得る。例えばその法案をわたしの会社で用意して、どこかの政党にもっていくこともありえます。

ふかみん:それ原さんにメリットありますか?

原:ボランティアになる可能性はありますけどね。

ふかみん:それなんですよね。声を上げた人がすごく大変になる。こっちの利益は薄くて広いから。業界は声を上げることで確実にメリットになるじゃないですか。利用者の側の、声あげる人にメリットがあればいいんですが。

原:現実的にいえば、新規参入してきて、困っている新興勢力の会社の人や規制改革をやろうとしている政党に持っていく、というのがてっとり早いですね。ただ、ほんとは広く薄い利益者の声を代弁する政策づくりの仕組みが必要ですね。

ふかみん:それが理想ですよね。

原:ひとつのテーマだけで寄付を集めるのは難しいですけど、利用者の視点から見た”規制改革連盟”にして、広く寄付を求め、その財源で対応していくとか。そういうのはあり得るかもしれないですね。

ふかみん:寄付集めるのも大変そうではありますが、ひとつの手ではありますね。

原:ひきつづきやり方を考えていきましょう。

●利用者がタクシーを選びやすいような工夫を

原:競争がいけない、と言うけど、ほんとはサービスの質で競争してほしいんですよ。提案したいのは、お客様がタクシーの運転手さんを格付けする仕組み。例えば五段階評価を利用者にやってもらって随時集計するようにする。、大勢の評価を集めればまともなデータが得られるはずですから、その評価をお客さんに見えるような形にできたらいいと思うのです。例えば、車体の色変えちゃうとかね。

ふかみん:屋根上についている行灯を派手にするとか。

原:そうすれば、道でタクシー拾うときどういう評価の運転手さんなのかすぐに分かるじゃないですか。値段が高くてもいいから良いタクシーを選ぼうとか、態度悪かったり、道が分からなくてもいいから安いタクシーを選ぶなど、利用者が選択できるような仕組みにしたらいいと思うんです。それも、お客さんに評価させるようにしてほしい。今でも「優良タクシー」といった制度があるのですが、実態は、永年勤続表彰と大差ないものだったりする。お客さんが評価するとなれば、運転手さんもいかに評価してもらえるかを考えるようになり、サービスを向上しようという気になる。そういうサービスの競争をどんどんやっていってほしいんですよね。

ふかみん:そうなると工夫や競争が自然とはじまりそうですね。あー、でも駅のタクシー乗り場で、評価の低い車がたまたま前に止まったら複雑な気分かも……(笑)。

原:それは、評価ランク別の乗り場にするんでしょうね。最初に言った同一地域同一運賃の話って、結局タクシーって選べないからなんです。いくらサービスがいい運転手さんがいても、乗るときはわからないから選べないですよね。だから同一地域同一運賃にするしかないってロジックなんですよ。それがおかしいでしょ、と。

ふかみん:最低レベルのサービスは保証して欲しいですけど、それ以上は自由に競争し、サービスにも工夫をして欲しいですよね。

原:世の中から規制がなくなってほしいって言ってるわけでなくて、正しい規制をしてほしいんですよね。

ふかみん:正しい競争をやってもらうための法律であって欲しいですね。

(タクシー関連規制の話、おしまい)
※原さんの連載「おバカ規制の責任者出てこい!」は国際情報誌『SAPIO』に掲載されています。こちらもチェックしてみてくださいね。


(編集サポート:モカ)

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