東京都青少年健全育成条例 推進派への疑問

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今回はロノさんのブログ『空の森』からご寄稿いただきました。

東京都青少年健全育成条例 推進派への疑問
最初に言っておくと、児童ポルノに興味もないし、むしろ反対です。特に幼い子を“モデル”と称して、エロの対象となるような恰好(かっこう)をさせて、金を稼ごうとする親は、児童虐待する親とレッテルを貼っています。撮影し、商品化する側にも買う側にも問題を感じますが、親が我が子を売るような真似をしなければ“盗撮”以外の犯罪は防げると思っています。

だから実害が出る幼児の撮影に対して、保護や規制強化がされないのであるなら、現行法で十分。改正の必要なし。そんな私ですが……京都と大阪はPTAの賛同をバックに改正が決定している流れがあります。実際PTA役員としての自分の身に起きた事態から、東京都で青少年健全育成条例改正を推進する人たちの言動には、ものすごく違和感を覚え、危機感さえもあるので“改正反対”の立場を取ります。このブログでも書いたことなのですが*1、どんな事態が起きたのか、今一度書きます。但し、大変恐縮なのですが、PTA絡みなので個人特定を避けるため地名や個人名は伏せています。

*1:「久方ぶりのマイブログ」2010年11月10日『空の森』
http://ironyt.exblog.jp/15434595/

平成22年7月 市内PTA連合協議会の理事会に参加。
前日までに通達されていた予定にはない東京都青少年治安対策本部総合対策部少年課副参事が来て、各小中学校のPTA代表の前で、“不健全図書”についてこう語りました。

「現在は子どもが自由に手に取れる一般の漫画売り場に、本来18禁コーナーに設置されるべき漫画が陳列されているような状況です。青少年にふさわしくない漫画等を東京都が不健全図書として指定し、成人コーナーへの移動を販売者に義務付けるという内容の改正案を都議に提出していましたが、“表現の自由”を侵害する恐れがあるとの反発があり、6月の議会で否決されてしまいました。9月の議会提出を目指したいのです」

と説明し、参事は幼女の写真集とDVDを数点、どう見ても通常の書店のコミックスの棚には並ばない18禁コミックスを数冊を
「おかあさんたちはこのような恐ろしいものが、普通の本屋で、子どもたちの手に届く形でおいていることを知らないので、こうして持ってきているんです」
と言いながら、約50人近くの父兄(PTAなのでほとんどが母親)に、回覧させ始めたのです。

子どもの保護とか、子どもが危険な目に遭っていると言いつつ、回覧された写真集やDVDのパッケージに映る子どもの顔にめばりしていないので個人を特定できる恐れもあるのでは? コミックスの方は、過激な性表現シーンすべてに付箋を貼ってあり、あえてそこを見るように指示し、
「このような本が、『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』と同じ棚に並べてある」
と言い切る姿には、ものすごい違和感がありました。

さらに
「青少年を不健全なものから守るために、毎月資料として、このようなDVDやコミックスを私たちは買ってチェックをしている」
とも言いました。

私は都内の主だった書店を歩いていますが、そんな無分別な書店は見たことがありません。仮にそのような書店があれば、その書店を摘発すればいいのです。そしていくら青少年のためとはいえ、毎月大量に出るコミックスの中から自分たちが「ヒドイ」と思う基準の本を探すために、税金(都税)も使っていると言っていました。1冊2冊ではなく、それなりの数を買うということに、都税を使うとはどういうことなのでしょう。これは毎月どのように経費をいくら使っているのか、都民に知らせる必要があると思います。

そして(これは個人的感覚ですが)買い込んだエロ本を総なめに見て、付箋を貼っていくという行動は、果たして健全な姿勢なのでしょうか? この事態に出くわした瞬間から、今日に至るまで未だに疑問なのです。

正直、ふたことみこと言いたかったのですが、現在、私が代表である小学校は、市P連(市内PTA連合)に正式加盟していおらず、その是非等をめぐり、一部父兄と対立関係にあること。この一部父兄が、某特定宗教に属していること。よく言えば熱心な子ども保護論者であると同時に、「なんでも学校が悪い。学校絶対悪」主義で、PTAは学校と闘争する労働組合と思い込んでいて、P連(PTA連合)加盟も望んでいること等、面倒な背景があるため、代表に成りたてで、内部も固まるかわからない時であったこと。ヘタに言うことで、社協(社会福祉協議会)*2 から校長先生にクレームが入り、悩ませるのが忍びないことから毅然としたことが言えず、かなり耐えていました。

*2:『Wilipedia』「社会福祉協議会」参照
http://ja.wikipedia.org/wiki/社会福祉協議会

周囲を見回すと、何の心構えもなく予備知識もない、各学校のPTA代表として集った多くの母親たちは黙っていました。ショッキングなものをいきなり見せられ、ものすごく不安感を煽(あお)られたのでしょう。
後日、
「この世にこんなひどいものがあったなんて、ショックでした」
「ひどい内容だし、都の市職員の言う通り児童虐待だけど、この危険をどう学校内に伝えたらいいのか、伺った内容には卑猥な単語も多くて伝えづらい」
と感想を寄せられました。

特にひどいシーンだけを短時間に見せつつ、風俗小説に並ぶようなセックス用語も言いながら、
「これは幼児虐待です。ひどいことです」
ということも、私には健全な行動とは思えません。

多くのPTAがこの手法で、感化させられています。そして「子どもは未熟でバカ」と称する都のPTA連合(都小P)の現会長も同じ手法で、周囲の親を感化しつつあります。不健全図書そのもに関しての是非以上に、条例そのものは現行のモノで十分であるのだから、推進派の人たちの、この“人のショックを利用して、人心操作する方法”は、かなり危険なやり方だし反対ですが、大阪や京都は多分、このやり方で親の賛同を得たのでしょう。

万が一、ここまで読んでくれた改正反対の方にお願いです。多くの母親は、子育てにものすごく不安を抱いています。操作される母親も情けないけれど、操作する方がもっと悪いのです。ご自身のお母さんを大切にしてあげて下さい。
言葉で「信じて」よりも、お皿の一つも洗ってあげて家事を手伝ってあげて下さい。そうすることからお母さんの気持ちは“推進派”から守れます。

・追記
どうやら私が直接見たコミックスは、18禁指定外のようです。治安課の“18禁”を信じた私。よく調べるべきでしたが、同じタイトルのコミックスをAmazon検索すると、年齢制限に引っ掛からず。ただ……該当のコミックスが掲載されている雑誌は、青年誌であり過激な性描写が入っていても問題なし。指定以前の問題で、小中学生が手にして読むようなジャンルではなさそうな雑誌です。コミックスは、青年誌コミックスの“棚”に陳列されています。ゾーン分けがそれなりにできている書店ですと、『ドラえもん』でおなじみの『てんとうむしコミックス』と、まったく同じ棚に並ぶ作品ではありません。

他の方が見たコミックス、そして他地区のPTA行脚で流した見本が、100%18禁なのか、そうでないのかは、正直わかりません。どっちもありそうなので、情報が欲しいところです。問い合わせてくださった方とのやり取りや、その後条例等を見ながら、つらつら思ったのは、推進派も反対派も“18禁”の指定がすごくあいまいというか、おざなりのままだったのでは? ということ。自分が見せられたコミックスを例にとると、私自身を含め、これといったエロ漫画を見ずにきた人にとっては“過激”でも、濃厚なエロ漫画をたくさん読んでいる人には、過激の“か”の字にも当たらず、せいぜい15禁レベルになってしまう。それだけの“差”があり、誰から見ても同一の見解を得られるものではないんですね。そうなれば、書店にしても並べ方に多少の違いは生じていると思う。

オタクには『とらのあな』も『まんがの森』も普通の範疇で、ここなら多少ドギツイ本も平気で入口付近に平積み。あってもたいていは気にしない。そして40代・30代で、高校卒業と共に漫画も卒業し、たまに機会があれば読む……そう思って暮らしている人の中には、『とらのあな』を知らない人も存在する(マジいます)。まして、そこに出入りする小学生って、どんだけ? そんなオタクが愛する書店と、紀伊国屋やリプロ・オアゾ等では、棚環境が違ってくる。

審議会は“不健全図書”になるであろうと思われる漫画・DVD・写真集を毎月税金で120冊〜130冊買い込み、問題点のチェックをしているわけだけれど、小学生、中学生、高校生で、性表現の審査基準を変える必要あるのでは?
そこまでしてるんだろうか? 購入先の書店環境はどうだったんだろう。それらを含めて、審査員の“青少年にふさわしくないエロの基準”というものがどんなものなのかハッキリしない。

規制可決する前に、審議会と出版社と書店、そして選定が難しいけれど、都小Pオンリーではなく一般保護者を含めて“青少年に見せていい範囲”の話し合いを十分にしたんだろうか?治安課のウェブサイトにそれらしきことが書かれているけれど*3、十二分に話し合い、それでことがすんでいるならば、もっとオープンにするべきで、今回の強硬な条例制定はやはり問題。

*3:「東京都青少年健全育成審議会 会議資料・議事録」2010年12月06日『東京都 東京都青少年・治安対策本部』
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/09_599_menu.html

どうしても“子どもの目”“子どもの手”から、不健全なものを見せたくなくて制限をかけるのなら、未就学児や義務教育期間の児童生徒に対して、書店の入店規制をかけたら? ひらたくいうと保護者同伴の義務付け。保護者同伴で絵本を選ぶように、漫画本を買えばいい。そして高校生に至っては、保護者の承諾書提示で書店入りすれば?

こんなことを言えば、これはこれで問題ありそうだけれど、表現規制という、その道で食べている人たちの生活を脅かす形で、足かせをつけるより、家庭の監督権の強化を図る方が健全だと思う。

執筆: この記事はロノさんのブログ『空の森』からご寄稿いただきました。

文責: ガジェット通信


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