今年の9月15日に、清水エスパルスの長谷川健太監督にインタビューを行った。今季は開幕から素晴らしいスタートを切った清水だったが、夏場の戦いに苦しみ徐々に順位を下げていた時期に当たる。清水を率いて6年、長谷川監督はどのような考えでチーム作りを行っていたのか、そして清水のサッカーの特長は何なのか、話を伺った。このインタビューはJマガ公式携帯サイトで10月初旬に掲載したもの。長谷川監督の退任が決まった今、改めてここでアーカイブスとして公開する。(全3回)

■長谷川監督インタビュー【第1回】静岡のサッカーとは
今年、小野伸二が加入して新しいシステムに移行した清水。夏場以降、なかなか勝ちきれない試合が増えているが、チャレンジングな姿勢を見せる長谷川監督のスタンスは揺るがない。何故サッカーの監督を目指したのか、そして清水という土地が持つサッカーの質など、監督の背景に迫りながら、清水エスパルスのサッカーを読み解く。

――監督以下、コーチだけではなくスタッフまで含めて『長谷川ファミリー』を作っていて、みんなでずっと一緒にいるという話を聞きます。
「もう6年目なので昔ほど一緒にはいないですよ(笑)」

――監督の練習では意図をスタッフも選手もみんなよくわかっていて、ほとんど指示を出さないでも次々にメニューがこなされていました。
「インターバルは短いですね。今日はそれでも新しいメニューだったので長く説明したほうです」

――説明は一番長くて2分程度でした。
「そうですか。ある程度練習メニューを変えながらやってはいますけど、毎日そんなに大きく変わっていくわけではないので、まるでやったことのないトレーニングというのがないからかもしれませんね。練習の意図は伝わっていましたよ。ダイナミックな動きをするというのが狙いでした」

――だからちょっと縦が長いフィールドを使ってトレーニングしていたのですね。
「そうですね。自分から動かないとチャンスができない、一対一の局面をどうすればいいかを考えなければいけないというメニューです。そこでどう絡んでいくか、どうスペースを作るか、というのを考えさせる内容でした」

――清水の練習は監督と選手の相互理解が早いのが特長だと思います。それは静岡のサッカーの考え方をベースにしていると思うのですが、長谷川監督から見た静岡のサッカーの特徴というのは何でしょうか。
「やはり、サイド攻撃ですね。パスをつなぐとか技術とか言われますけど、高校で叩き込まれたのはサイド攻撃でした(笑)。中山(雅史・札幌)もサイドからのボールに飛び込んでゴールをとるタイプでしたし、そこに中盤のファンタジスタがどう絡むかでしたね。ファンタジスタは伸二(小野)もいましたし、その前は名波(浩)とかノボリ(澤登正朗)、大榎(克己)などがいましたから、最後はサイド攻撃なんですけど、その前にどうアクセントをつけるかということ。

サイドを崩すタイプの選手はいましたからね。センターフォワードらしいタイプの選手が育ってきたのも、そうやってサイド攻撃があったからだと思います。高原(直泰・水原三星/韓国)もそうですし、西澤(明訓)もそうですし、サイドを機軸にして戦うからこそ、そういうタイプのFWが出てきたんだと思います。静岡には小さくて走り回るタイプのFWはいないですよね。タツル(向島建)はいましたが、彼もサイドアタッカーで左から中に切れ込んでくるタイプで、カズ(三浦知良・横浜FC)もどちらかといえばサイドに行くタイプですから」

――静岡のサッカーの弱点は何ですか?
「弱点ねぇ……うーん……人がいいところじゃないですか(微笑)。よく言われるのは、強いところに強くて弱いところに弱いとか、政治家が育たないとか、温暖な気候でハングリーな人種が育ちにくいとか。静岡には山も川も海もあって、食べるものに困らないじゃないですか。そういうところが勝負弱さにつながるんじゃないかと……」