ウェブ時代の“本”の強みが実際に体験できる電子書籍

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 「電子書籍元年」と言われた今年は、少しずつではあるが出版業界が変わり始めていることが感じられる年であった。

 例えば「iPhone」や「iPad」の普及により、その端末に対応したアプリ形式での電子書籍が数多く配信された。そして、その中からは、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海/著)や『適当日記』(高田純次/著、いずれもダイヤモンド社/刊)といったヒット作も生まれた。
 ほかにも、作家の村上龍さんが電子書籍会社「G2010」を設立。SONYや大日本印刷などの電子書籍業界への参入。ツイッターでは、電子書籍の割引キャンペーンが展開されるなど、端末だけでなく電子書籍の普及を促進するウェブの体制が整ってきたというのが2010年の印象である。

 そんな中、これまで度々指摘されてきた“電子書籍について語られる本が電子書籍で読まれない”というある種の矛盾も大きく改善されつつあるのも一つの特徴と言えよう。

 今年7月に出版された『ブックビジネス2.0 ウェブ時代の新しい本の生態系』(実業之日本社/刊)のiPhone及びiPad対応の電子書籍アプリが11月17日にリリースされている。
 本書はインターネットの学術利用について詳しい岡本真氏とフリー編集者の仲俣暁生氏による編集のもと、ウェブ時代に書籍はどのように変わっていくのかについてジャーナリストの津田大介氏や国立国会図書館長の長尾真氏らが論じる一冊だ。

 電子書籍版は無料と有料に分かれており、無料版アプリをインストールすると、書籍版には収録されていなかったスペシャル座談会を読むことができるほか、アプリ機能の体験が可能だ。興味ある文章を、ツイッターを通して共有できるツイッター連携機能も、電子書籍ならではといえる。
 また、本文のダウンロードは有料だが、その際に試し読み(電子立ち読み)が可能となっており、自分の興味ある章の原稿を分割して読むことができる。

 電子書籍がいかに革新的であるかを直に知ってもらうためには、電子書籍を体験してもらうしかない。ところが、これまでは紙のみであった以上、いくら訴えたところで空論と化していたところがあったのではないか。
 しかし、本書のようなテーマの書籍が電子書籍でリリースされることで、こうした問題が一気に解決に向かうことが想像できる。

 また、本書のように無料で読める原稿を付け加えたり、様々なキャンペーン展開の可能性が開けたのは、紙にはない、強烈な付加価値である。

 端末のインフラの整備が進みつつある中、本書『ブックビジネス2.0』のような“電子書籍を論じる電子書籍”は爆発的に増えていくということは容易に予測される。そういった状況の中で、我々、読み手もどのように変化に対応していくかが問われる。
 『ブックビジネス2.0』は、「本」を取り巻く全ての人が関わる議論を展開しているので、“新しい時代の書籍”を考える上で参考になる一冊だ。電子書籍の可能性を試しては感じてみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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