アイドルCDに見る「価格差別」の真相

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 経済学には、「価格差別」という考え方があります。同じ商品を売るときに、誰にでも同じ価格で売るのではなく、高くても買う客には高く売り、安くないと買わない客には安く売るという考え方です。

 しかし、売り手側がお客の予算感を把握することは難しく、「価格差別」の実現は一筋縄ではいきません。そこで売り手側は、手を変え品を変え、様々な戦略を立てて「価格差別」を生じさせて儲けを出そうとするのです。
 今回は『マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか?』(吉本佳生/著、講談社/刊)より「価格差別」を実に上手に活用して儲けを出した例を紹介します。

■某アイドルの投票権付きCDの戦略
 某アイドルグループ歌手がCDを出しました。
 そのCDには、熱心なファンなら何枚でも同じCDを買いたくなるような“魅力的なオマケ”が付いていました。その狙い通り、熱心なファン達はCDを何枚も買いました。しかし、CDを複数枚買った人は、オマケだけ抜いて、CDの転売を始めました。
 結果として、販売直後にもかかわらず見開封の新品CD(定価3,980円)が、2,000円とか、1,000円で出回ることになってしまいました。

―さて、このCDの販売元は、転売のせいで損をしたのでしょうか?

 実はこのCDの販売元は、転売が理由でちっとも損はしていません。
 それどころか、新品のままのCDが、1,000円で転売されたことさえも好都合だったのです。

 その理由は次の通りです。

 例えば、A君・B君・C君という、3人のアイドルグループファンがいたとします。

 それぞれ、グッズの購入に使える予算は下記の通りです。
・A君:5,000円
・B君:10,000円
・C君:50,000円


 3,980円の価格で売り出されたCDの特徴は、
・ファンなら誰でもほしいオマケ(投票権)が付いている。
・しかも何枚でもほしくなるカラクリ付(CD1枚に1回分のファン投票権が付いている)
・つまりCDを買った分だけ、オマケの投票権で贔屓のメンバーに投票することができる仕組み。


 すると、A君、B君、C君の消費はこのようになります。

・A君は 5,000円まで使えるので、 1枚買って、 3,980円を出費する。
・B君は10,000円まで使えるので、 2枚買って、 7,960円を出費する。
・C君は50,000円まで使えるので、12本買って、47,760円を出費する。


 ひとつの価格で販売されるCDなのに、オマケを工夫することで、高くても買う客には予算の上限に近い金額を出費させることに成功しています。つまり、儲けの鉄則「価格差別」の実現に成功しているのです。

■CDを転売されてもへっちゃらな理由
 続いて、「転売さえも好都合」の理由です。

 さっきとは別の、A君、B君、C君、D君という同じ学校に通う4人がいるとします。
 それぞれの予算は以下の通りです。

・A君の予算は、10,000円
・B君の予算は、 2,000円
・C君の予算は、 1,000円
・D君の予算は、 4,000円


 10,000円の予算内では、A君は2枚しか買うことができませんが、1枚1,000円で友達に転売することを考えれば、3枚まで買うことができます。ひとまず、3枚買って一旦11,940円出費しても、翌日友達に、オマケを抜いたCDを2枚転売してしまえば、2,000円は回収できるので、差引き 9,940円の出費になり、予算内に収まります。

 A君の手元に残るCDは、1枚だけなので、1枚のCDに対して9,940円の支払となり、結果として、Aにとっての価格は1枚あたり9,940円になります。
 高くても買う客が、まさに高い価格を払った価格なので、「価格差別」が実現しています。

 一方で、B君とC君もCDは欲しいけど、3,980円は払える価格ではありませんでした。
 しかし、A君が1,000円で転売してくれたので、3,980円のCDを1,000円で買うことができるのです。
 販売元としては、転売があることによって、「安くないと買わない客」にまで売り込むことができたことになります。B君C君が安く買った分の負担は、A君がしっかりとしています。

 もし転売がなかったら、A君も2枚しか買っていなかったでしょうし、B君もC君もCDを買っていなかったでしょう。しかし、転売があることで、A君は3枚CDを買い、転売で、B君もC君も買うことになったのです。

 『マクドナルドはなぜケータイで安売りを始めたのか?』には、この他にも身近な価格の裏に隠された、商品の売り手側の戦略が明らかにされています。
 楽しんで経済を学べる本として、手に取ってみてはいかがでしょうか。
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