“つぶやく”だけで電子書籍が割引
 あなたがツイッターでつぶやけば、電子書籍が割引価格で買える!?
 長く不況下にある出版界の“数少ない希望”ともいうべき電子書籍に関して、12月1日に新しい試みが始まったのをご存じだろうか。
 その名も「ブックーポン」
 図書印刷株式会社が制作し、発売した電子書籍(計3タイトル)に対しての応援メッセージを特設サイトやツイッター上で投稿すれば、その数に応じてそれらの電子書籍の価格が下がっていくというものだ。
 本は基本的に割引しないもの、と思っていたが、電子書籍は勝手が違うらしい。

 このキャンペーン、「電子書籍は気になるけど、試してみようか迷っている」という人にとっては、電子書籍に触れる格好の機会だが、気になるのは“どれくらいまで値段が下がるの?”ということではないだろうか?

 一風変わったこの試みの核心に迫るべく、図書印刷株式会社クリエイティブ・センターの加藤達也さんにお話を伺った。

◇ ◇ ◇

―今回電子書籍普及のための新たな試みとして「ブックーポン」と銘打ったキャンペーンを実施されるということですが、まずは「ブックーポン」の説明をお願いできますか。

加藤「『ブックーポン』というといわゆるクーポンサイトを思い浮かべられるかもしれませんが、しくみが少し違っていて、日本で初めての電子書籍応援&割引サイトと銘打っています。
『ブックーポン』は、キャンペーンの対象となった電子書籍(今回は『ゲームデザイン脳桝田省治の発想とワザ』『iPhone情報整理術』『夢をかなえるツイッター』の3タイトル)や、その著者様に対する応援メッセージを特設サイトで募集し、その数が多ければ多いほど販売価格が下がっていくキャンペーンです。
応援メッセージの募集をツイッターを介して行うことで、『ブックーポン』のサイトを訪れたユーザーの方だけでなく、一般のツイッターユーザーの方々の目にも応援ツイートが触れ、広がっていくようにしようという試みです。ツイッターでこのキャンペーンを通して、少しでも多くの方に電子書籍への興味を高めていただくのがキャンペーンの全体のねらいです」

―こうしたキャンペーンはユニクロの前例がありますが、電子書籍でこういったキャンペーンをやろうと思った理由は何だったのでしょうか。

加藤「紙の本については弊社も、出版社様とのパートナーシップの中で、どう作りどう売るか考え取り組んできた長い経験があります。しかし、今は電子書籍が立ち上げ時期で、出版社様もどうやって電子書籍を市場に出して売っていくか、という方法をそれぞれいろいろな模索やチャレンジをされています。
そんななか、今後も出版社様とともに成長していくためには“電子書籍をいかに読者の方々に届けるか”ということから一緒に考え、実行していく必要があります。
例えばApp Storeの現状を考えても、品揃えやプロモーションが売り主の思うに任せない部分が多い。そういう状況下でなお能動的なプロモーションをするにはどうすればいいか?と考えて企画したのがこのキャンペーンです」

―市場はまだまだこれからという感のある電子書籍ですが、その理由はどんな点にあるとお考えですか?

加藤「いくつかあると思います。まず、読書のための環境が充分整っていないということです。“このデバイスで買ったのにこっちのデバイスでは読めない”といった問題です。
それから、電子書籍という製品――弊社では“作品”と呼んでいます――この“作品”自体のユーザビリティの問題です。紙の本より優れた部分も既にたくさんあり、どんどん進歩していますが、まだまだ改善の余地が数多くあります。
一方、これは今回のキャンペーンで重視している点でもあるのですが、読者が電子書籍に出会う機会がまだまだ絶対的に少ないということも大きいと考えています。手に取って試してもらえれば、“なるほどこういうものか”という印象を持っていただけることもあるでしょうし、もっとこうだったらいいのにという要望を、さまざまな視点から数多くいただくことができれば、それだけ進歩のスピードも速まるのではないでしょうか。その意味で、まずは読者との出会いの機会を増やすことが重要だと思っています」

―今回のキャンペーンで集まる応援メッセージの数は現時点でどれくらいを予想されているのでしょうか。また割引率はどれくらいですか。

加藤「メッセージの数に応じた割引幅は3段階設定しておりまして、100ツイート集まると一段階下がり、500ツイートでもう一段階、1000ツイートで最低の価格になるようにしています。割引率は今回キャンペーン対象となっている3作品それぞれで少しずつ異なりますが、最大およそ3〜4割になります」

―応援メッセージをツイートしなくても割引価格で買えるというのがいいな、と思いました。

加藤「ライブのチケットとかホテルのディナーなど、“すごく欲しいんだけど、高価だから…”、という性格の商品であれば別ですが、電子書籍はそこまで高価なわけではなく、“そもそもよくわからない”“試してみようかどうしようか”といった状態にある方が多いと思います。先ほど申し上げたように今回は「電子書籍との出会いを増やすこと」を重視していますから、対象電子書籍の購入をキャンペーン参加の条件とはしないことにしたのです。もちろん最終的にはたくさんの方に電子書籍を購入し、親しんでいただきたいですが、まずは“電子書籍ってこういうものなのか”と気づいてもらうことが第一だと考えています」

―加藤さんは現状の出版界に対してどのような思いを持っていらっしゃいますか。今回のようなキャンペーンを計画されるからには“出版界を変えてやろう”という想いもあるかと思うのですが。

加藤「そのような大それたことではなく、今の世の中に合った形で、著者さんや編集者さんを始め、いろいろな方が関わって作りあげられたコンテンツが、それを読みたい読者にきちんと届き、喜んでいただけるようにすること。そのためには何が最善か?ということに尽きます。
ただ、長い間ほぼ同じ形で続いてきた出版コンテンツの流通に、違う手段が立ち現れてきたことは事実。その手段を使って、コンテンツを生み出す方々と読者の方々との繋がりをもっと多彩なものにできればいいなと思います」

―今後も新たなコンテンツを対象に、このようなキャンペーンを展開する予定はありますか?

加藤「今回技術評論社様のご協力で取り組んだ3タイトルを皮切りとして、第二弾・第三弾と継続的に実施していく計画です」

―図書印刷では他社の作る電子書籍とどのように差別化を図っておられるのでしょうか。

加藤「まずしっかりした作品を作れる技術があるということが第一です。その上で、今回のキャンペーンのように、“売り方”というものを出版社様と一緒になって考え、チャレンジしていく姿勢ですね。まだ電子書籍はプラットフォームや売り場も百花繚乱で、読者の方々だけでなく出版社様から見ても何を選んでいいのか迷ってしまう状態です。弊社は出版社様とともに、あるいは出版社様に成り代わって、適切なデバイスや売り場、売り方を一緒に考えることができるということを強みにして、市場を大きくしていきたいと考えています」

―電子書籍市場の今後の展望をお聞かせ願えますか。

加藤「その質問の答えになるかはわかりませんが、電子書籍の市場が立ち上がったことによって、弊社としては読者の方々との距離が近づいてきた、生の声を伺う機会が増えてきたという実感があります。
今回のキャンペーンでは、応援ツイートという形で、電子書籍に対する様々な意見が寄せられることになると思います。好意的なものもあるでしょうし、中にはそうでないものもあるかもしれません。しかしそういったさまざまな声を直接伺えること自体が、今回のキャンペーンにチャレンジする価値だと思っています。今後の糧となるように、どんな意見も貪欲に吸収していきたいですね」

―電子書籍に関心をお持ちの方々にメッセージをお願いします。

加藤「どんなものなのか、一度手に取っていただきたい、それに尽きますね。それで、ご意見はどんどん声にしてお寄せいただきたいです。その声が著者様にしても出版社様にしても弊社にしても、“もっとこうしよう”という気付きに繋がり、電子書籍の世界をより良くしていく材料になると思います。
それと、今回のキャンペーンは、対象となった3作品の発行元である技術評論社様と一緒に考えてきた部分があります。初めての試みにも関わらず、理解して乗ってくださり、とても感謝しています。今回のキャンペーンが技術評論社様にとってもいいものになることを願っていますし、今後、出版社様のコンテンツ価値向上ということに繋がっていけば、これまでの恩返しになるかなと思います」

◇ ◇ ◇

 出版界全体にとっても試金石となるこのキャンペーン。
 まだ始まったばかりだが、結果次第では今後の電子書籍市場に大きな影響を与えるものになるはずだ。

 電子書籍に興味があるものの、まだ試していないという人は、これを機に手に取ってみてはいかがだろうか。
(新刊JP編集部/山田洋介)


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