HIV感染者が激増しているということを知っているだろうか? 95年までは年間感染者が200人程度だったのが09年には1021人に膨れ上がっている。感染、即、死ぬという認識は改まったが、だからこそ差別や偏見に悩まされていると聞く。若い人たちへの啓蒙も進んでいるとはいえない。
『感染宣告』は世界の最貧国をルポルタージュしてきた石井光太が、初めて日本で挑んだノンフィクション。「HIV」というテーマを恋愛という切り口で取材した、とても考えさせられる一冊である。
 薬害エイズや母子感染を別にすれば、HIVの感染はほぼセックスに由来する。同性愛、売春などで罹患した人たちのその後の行動や考え方は正に千差万別だ。石井は取材対象者に対してフラットで偏見なく、誠実にインタビューしていく。不幸な事例と幸せな結果の差はほんの紙一重に思える。愛情と性欲、生々しい問題だが避けられない。
 もう一冊『HIV マリコの場合』は1992年に罹患した一人の少女の物語。ちょっとしたきっかけで、彼女の人生に伴走することになってしまった著者が、十年後、マリコがハワイで死去するまでを追った作品だ。愛情や友情に裏切られたマリコだが、最後に抱いた希望も、やはり愛情だった。
 この二作を通して、エイズという病気の恐ろしさをもう一度知って欲しいと思う。

(東えりか)







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