「太田が書くと、小説はこうなる」

 爆笑問題・太田光の小説デビュー作となった『マボロシの鳥』(新潮社)の背表紙には、このような文言が添えられている。
 
 同作品には、舞台芸人の光と影を描写した表題作をはじめ、他人とモノの感じ方が違うが故にいじめられている少年の美意識を表現した『ネズミ』や、かつて世界を終わらせようと誓い戦争に乗り込んだ男の結末を描いた『タイムカプセル』など、"ここに似たどこかで、僕たちに似た誰かに起きた"9つの奇跡(ナイン・ストーリーズ)がおさめられている。

 それらの物語のなかには、太田氏の内面で育まれた考え方が、少なからず見え隠れする。爆撃機に乗って敵国の上空で"戦争"と向き合っていた青年が登場する『タイムカプセル』では、このような言葉がでてくる。

 「不思議なことにいつも、戦争を戦うのは、人生の初心者である若者です」

 "殺せ"と"平和"がどうしても繋がらない青年の苦悩を、太田氏らしい一文で表す。

 また、落ちぶれてしまった舞台芸人が酒場で、少し頭のよくない中年男に話した心情はこうだ。

 「お客を喜ばせたいとか、楽しませたい、なんて言うのは、後から付けた理屈だよ。一番の理由は、この客には、今、自分が必要なんだって、確認したいからだ。自分の芸を見て、一人でもお客が笑ったら、その客に自分は必要とされているって信じられるんだよ。芸人は、いつもその確認をするために舞台に上がるんだ。客を幸福にする為じゃない。自分が幸福になる為に舞台に上がるんだ」

 この世で一番幸福なことは、誰かに必要とされることなのだ。

 不器用な印象の強い太田光。そんな同氏の内側にある"素直な思い"が物語のなかで確認することができる。良くも悪くも、太田の遺伝子が散りばめられた作品といえる。



『爆笑問題・太田光『マボロシの鳥』で小説デビュー』
 著者:太田光
 出版社:新潮社
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