W杯開催中にフランス代表のレイモン・ドメネク監督(当時)を控え室で罵倒し、フランスサッカー連盟から18試合の代表戦出場停止処分を受けたニコラ・アネルカ(チェルシー)が、久々にフランスのメディアに登場した。

 アネルカは、親交のある黒人ラッパー、ブーバとともに12月1日発売の音楽雑誌「レザンロキュプティブル」の表紙を飾り、インタビューに応じている。

 インタビューでは、アネルカにフランス代表に戻る気はあるのか、という質問がなされている。というのもごく最近、代表のローラン・ブラン監督がアネルカを惜しむ発言をしており、出場停止の短縮によりユーロ2012直前の代表復帰もあり得る、という報道があったためだ。

 しかしこれについてアネルカは、「何でいまさら俺の代表復帰が取り沙汰されるんだい? ほんとうのところは、W杯前にドメネクに言ってあったんだ。大会後に代表から引退するって。連盟だってそれを知っている。なのにあえて出場停止にしたのは、自分たちの手で秩序を回復したように示したいからさ」と代表に戻る意思はまったくないことを繰り返した。

 このほかにも、親しい黒人ラッパーとの共同インタビューでリラックスしたアネルカは、“バッド・ボーイ”の面目躍如たるフランス社会批判を連発。W杯開催中のチーム内のいざこざに関する報道についても、「リベリがグルキュフを殴った、グルキュフはよいフランス人で、リベリはイスラム教徒、とくる。フランスでは、勝てないとすぐに宗教や人種を持ち込むんだ」と社会に根付く差別感情を指摘した。

 “白人中心主義”に対するアネルカの怨恨は、こんな発言にも表われている。「俺はシテ(移民労働者が多く住む郊外の低所得住宅街)出身で初めてフェラーリを所有した選手だ。このことで頭痛を催した奴らがいるんだ。いまだに理解できないね。俺が20歳でマドリーに行って、カネをもうけた。フェラーリを買った。人はこんなことで俺をけなしたんだ」。

 ブーバは新作で、フランス国歌「ラ・マルセイエーズ」の歌詞をもじって、「栄光の日が来た。祖国の子供たちよ。(...)しかしこの祖国、ニグロが好きじゃない」と歌う。ブーバは、もともと軍歌であったラ・マルセイエーズの一節「進め、不浄の血が我らの田畑を潤すまで」について、「この不浄の血ってのは、アルジェリア人の血、アフリカ人の血ってことなんだ」と話す。

 アネルカもこれを受けて、「フランス代表にいたとき、ラ・マルセイエーズを歌いたいと思ったことは一度もない。もしどうしても歌えと言われたなら、拒否しただろうし、チームを去っただろう」と語っている。

 アネルカに理があるかどうかは別として、W杯で噴出したフランス代表のさまざまな問題の背景として、フランス社会のむずかしい状況が微妙に作用していたことはあらためて確認できる。