本作りは出版業界だけのものではなくなる?
 先週配信した記事でも書いたように、電子書籍に対する出版業界の認識は変わってきている。
 その1つの兆候としてあげられるのが、2010年夏以降、「電子書籍によって出版市場はどのように変わるか」というテーマの本だけでなく、「電子書籍をどのようにして作るか」というテーマの本が出版されるようになったことだ。

 出版社側はどのような意図の元に、「電子出版の作り方」をテーマにした書籍を出版したのか。9月1日に『電子書籍の作り方ハンドブック』(ジャムハウス /著)を出版したアスキー・メディアワークスにその理由を聞いてみた。

 
 本書『電子書籍の作り方ハンドブック』は電子書籍の代表的フォーマットである「EPUB」形式を中心に、作り方や売り方を解説した一冊だ。(「EPUB」とはアメリカの電子書籍標準化団体が推進する電子書籍ファイルフォーマット規格の1つで、「iPad」や12月10日の発売が発表された「Sony Reader」などでも採用されている)
 アスキー・メディアワークスは本書を出版した理由を以下のように語る。

「2009年から2010年にかけて、“電子書籍端末の本命”と目されたハードウェアが次々とリリースされ、業界・市場が盛り上がる中で、当編集部でも『ぜひ電子書籍をテーマに本を作ろう』と企画の選定を進めていました。
その頃、『電子書籍は出版市場をどうするか』といった業界動向やメディア論寄りの本はよく見られたのですが、私たちは、iPadやKindleなど魅力的な端末が登場し、このまま作品配信プラットフォームも整っていけば、本作りは決して出版業界だけのものではなくなるのではないか、つまり、編集者やデザイナー等の“プロ”だけではなく、一般読者・ユーザーも『自分で電子書籍を作りたい』と思うのではないか、という結論に至りました。
そこで、単なる“プロ向けの業界本”ではなく、本作りの経験が全くない初心者にも電子書籍をめぐる環境やその製作手順、気をつけるべきポイント、ノウハウがしっかりわかるような内容の本の制作を企画したのです」


 電子書籍の可能性の1つとしてあげられるのが、“本作りが全ての人に開放される”ということ。つまり、個人出版の敷居がかなり低くなるのである。

 さらにそれは個人に限ったことではない。11月12日に、本の販売を行う「リヤカーブックス」が電子書籍『紅帯十段・安部一郎』(有馬ゆえ/著)のリリースを発表した。「リヤカーブックス」の経営は有限会社ノオトという編集プロダクションが行っている。つまり、『紅帯十段・安部一郎』は編プロ業界で初めてとなる、完全書下ろしの電子書籍となる。

 このように個人出版だけではなく、編集プロダクションや同人サークルなどを含めた、様々な人々が独自のレーベルを立て書籍を出版できるのが電子書籍の特徴ともいえるだろう。
 『電子書籍の作り方ハンドブック』を出版したアスキー・メディアワークスにはこんな声が届いているという。

「本書を読んで頂いた、たくさんのお客様から『分かりやすかった』『すぐに始められるので良かった』などのご評価を頂きました。また、電子書籍の歴史や現在の状況、また『よい本を作るためにプロが気をつけていること』について、それぞれの専門家、プロフェッショナルの方にご寄稿を頂き、この点についてもご好評を頂いています。
想定した以上に電子書籍を自作したい、また自作の本を売ってみたいという読者の声が強かったと思います」


 リーダーが出揃いつつある電子書籍。
 その中で、アスキー・メディアワークスのコメントの中に見受けられる“本作りが出版業界のものだけではなくなるのではないか”という意識は、出版社側にもそして読み手側にも持つべきだろう。
 リーダーや規格だけでなく、本の作り手の間でも、より激しい競争が始まるのだろうか。
(新刊JP編集部/金井元貴)

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