日中間の尖閣問題に続き、足許では北朝鮮が韓国の領土を砲撃するなど、東アジアの緊張感がかつてないほど高まっている。従来とは異なるフェーズに入った周辺地域の脅威に対して、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長は、「座標軸」が定まらない政府に警鐘を鳴らす。田中理事長が説く次世代の外交・安全保障体制のあり方とは?(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 原英次郎・小尾拓也、撮影/宇佐見利明)


たなか・ひとし/1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

――日中間で発生した尖閣諸島問題以降、日本を取り巻く東アジア地域でかつてないほど緊張感が高まっている。足もとでは、新たな濃縮ウラン施設を稼動させていることが発覚した北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、韓国領土への砲撃に踏み切った。田中理事長は、アジア・大洋州局長時代に小泉首相の訪朝を実現させ、対北朝鮮政策に精通している。政府は北朝鮮問題に対して、どう対処すべきだろうか?

 核開発というカードだけで生き残れなくなった北朝鮮の行動は、国の存続を懸けた戦いの様相を呈し始めている。まさに「貧者の脅迫」だ。

 現在、北朝鮮の政権内部で何が起こっているのか、正確には誰もわからないが、金正日総書記の健康状態や国内の経済状態が悪化しているため、「早く後継体制を固めたい」「時間的余裕がない」と焦っているのだろう。

 だから、こうした蛮行に出て「我々にはもう失うものはない。しかし、あなたたちにはあるだろう。失いたくなければ、交渉に応じろ」というメッセージを送っているのだと思う。

 日本がまずしなければならないことは、日米韓が一体となって隙を見せないことだ。そして、彼らを話し合いの席に着かせるために、北朝鮮と国交を持つ中国を引き込み、交渉の基盤を強化する必要がある。

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