【シェアな生活】記者クラブの密室での取り決めが選挙の勝敗に影響を及ぼす?〜『記者会見ゲリラ戦記』畠山理仁さんインタビュー

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省庁記者会見オープン化についての活動を繰り広げるフリーライター畠山理仁さんに”公の情報共有”についてきく。第2回目です。前回はこちらからどうぞ。

登場人物:
畠山=畠山理仁(はたけやまみちよし)。記者会見オープン化を求める活動で注目されるフリーライター。
深水=深水英一郎(ふかみえいいちろう)、ガジェット通信。

●理想の記者会見

――深水:畠山さんの理想の記者会見ってどのようなどのような形ですか?

畠山:基本は質問したいと思う人が全員入れる記者会見ですね。

――深水:全員ってどこまでですか?

畠山:ブロガーだっていいと思いますよ、僕は。

――深水:その日たまたま聞きたいことがあった人が、行って話をきけるぐらいの?

畠山:聞きたいことがあったおっちゃんとかでも、僕はいいと思いますけどね。セキュリティの問題があるなら、「申し訳ないけど手ぶらで入ってくれ」とか。「ここから動かないでくれ」とかルールを決めればいい。

――深水:ちゃんとセキュリティチェックを通せばいいだけのことですよね。普段通り警備をちゃんとしておけばよいだけの話で。会見室がいっぱいになりそうなら人数制限なり抽選なりすればよいですし。

畠山:ええ。物理的に会見室に入りきれないというのが、今までの建前上の断る理由だったんです。でも、実際には座れなければ立ち見もできるようにしたらいいだけですし、それでも無理なら先着順にしたりとか、公平な形で入れるようにすればいいと思います。裁判の傍聴みたいな抽選もあるし。今は誰がメディアで誰がメディアじゃないっていうことはそんなに重要じゃないですよね。そもそも、人間は人に伝えたい気持ちがあるものですから。そのなかの優先順位として、たとえば新聞は購読者が何百万人もいるから枠が少し多めですよとか。ブロガーの人は抽選になっちゃうかもしれませんけど、ただ入れる門戸は狭くても開いてますよっていう状態は作ったほうがいいと思うんですね。たとえば人数制限の割り当てとして、媒体の読者数によって「新聞は多いから4席ね」とか「雑誌は2席」「ブロガーは1席でお願いします」とか。また、ブロガーの読者が多くなるにつれて席数が拡大したりとかいうことがあってもいいと思うんですね。

――深水:ソーシャルメディアの時代、誰でも媒体を持てる。

畠山:アメリカとかの家電見本市って、ブロガーをプレスとして入れてるんですね。たとえば、一日に何万アクセスあるということが証明できれば、プレスとして取材をさせる。メディアとして認められるわけです。それは個人のブログであってもそうなんですよ。家電やガジェットの場合、もう一ついいのは、そういうメディアの読者は基本的にオタクで、そのジャンルが大好きで読みたいって言う人が読んでいるということ。そういう人が何千人いるメディアは、漫然と読まれている巨大媒体より効果がある。そしてブロガーの方もスポンサーに変な配慮をすることなく、自分の好きなことを好きなようにレポートするから、広告で事実が曲げられることなく、読む人が読みたい情報が出てくる。そういう、新聞等なにかとしがらみがあるところにはできない記事を書ける可能性がある人が取材に来るということはとても重要なことだという認識なんです。

――深水:メーカーにとってはちょっとした恐怖では?

畠山:まあそれが嫌だっていうメーカーはダメじゃないですかね。ゴマ化して売ろうっていうことですから。逆に厳しいことを言ってくれる人が入った方が、早く商品も良くなるだろうし、そういう商品を作れないところは早く見切られるだろうし、その方がずっといいと思います。

――深水:『ガジェット通信』って、メーカーさんから製品借りてレビュー記事を書いたりするんですが、書き方によっては「借りておいてそんなことを書くのか」と言われることもありますよ。

畠山:ああ、言われたりします? でも、どうなんですかね。僕も昔雑誌でデジタルもののコラムをやってて、製品借りたりしていたんですけど……。借りて厳しいことを書いて「次からは貸さない」ってなったことありますか?

――深水:そこまで悪化することはなかなかないですね。

畠山:そこまではいかないけど小言は言われるってことですか?

――深水:ブログメディアの影響力があまりに大きくなってきていて、メーカーさんもネガティブな記述を恐れているんですよね。もちろん、商品レビューの基本は「いい商品をみつけてきて、読者に興味を持ってもらう」なのですが、レビューしたものが100%素晴らしい商品だということはないわけで。それでもレビュー用に製品を借りる場合、釘をさされることはありますね。まぁ結局「買って書くんだったら自由だけど、借りるんだったらわかってますよね……」ということです。好きに書いていいと言ってくれるところもありますけれども。

畠山:難しいですね、それをどうするかというのは。借りてると書きにくいことってあるのかなあという気がしますね。でも、全部買っていたらもたないですよね。

――深水:現状、全部やると持たないですね。レビューしてみたいものは、おもちゃから自動車まで多岐にわたりますし。レビューがきっかけではないんですが、取材拒否されているところもあります。まぁ、媒体をやっているとこういう軋轢は避けられないんじゃないかなと思いますね。大手の媒体さんでも出入り禁止にされてるメーカーさんがある、なんてな話もききますしね。要は誰に対して誠実であるべきか、という基準をしっかり持っておくということで。それで貸してもらえないんだったら、他の手を考えるしかないですね。

●畠山さんが記者会見オープン化に興味をもつまで

――深水:畠山さんは大学在学中から執筆を始めたそうですが、その頃から政治に興味があったんでしょうか。

畠山:そうです。はじめはね、普通にニュースの記事を書いてました。事件モノとかを追っていて、和歌山の毒カレー事件とか、サカキバラ事件とか。取材に行って林真須美さんにホースで水をかけられたりとか。

――深水:それって週刊誌の取材ですか?

畠山:週刊誌ですね。

――深水:いろんな媒体に書いてこられて、記者会見っていうテーマに行きついたのは何故なんでしょう?

畠山:そもそも記者クラブ問題を最初に知ったのは選挙なんですけども、選挙の時って”インディーズ候補”の人も出馬されるじゃないですか。いわゆる新聞に名前しか載らない人ですね。

――深水:言い方が難しいですが、マイナー候補というか、いわゆる本命候補じゃない候補のことですね。どういうところからそういう人を見つけるんですか?

畠山:まず、選挙がありますよね。公示前に選挙管理委員会の事前説明会があるんです。立候補するためにはいろんな書類を出さなければいけないので、選挙前に立候補予定の人たちに説明会を何回か開くんですね。そこに問い合わせして、「どんな人が来ていますか?」と聞いてみるんです。もちろん、公開を望まない人のことは教えてくれないんですけど、それ以外の立候補予定者のことは教えてもらえるんです。その説明会に立候補する本人が来ていることもあります。

――深水:立候補予定者がそこでわかるんですね。

畠山:そうそう。立候補予定という人の名簿を見せてもらって。それはもう、選管のほうで公表してもいいと許可を得ているものなんですけども。それを見て「あれ、この人はどんな人なんだろう?」と言う人を見つけます。で、選挙の公示日に、届け出をする選管のところで朝から待っていると立候補する人たちがいろんな書類を持って集まってくるわけです。もちろん、すでに有名な人も来ます。現職の人とか、元職の人とか。その方以外で、「この人は見たことない人だなあ」あらかじめ「話をききたいなあ」と思った人に取材させてくださいとお願いしてるんです。

――深水:それが”インディーズ候補”なんですね。

畠山:主張は面白いんですよね。でも、新聞を見ると全然載ってないんですよ。載ってても一行とか。それも「独自に戦いを展開している」とかいう、曖昧な書き方で。で、その「独自の戦いを展開している」って書かれている人に「新聞に独自の戦いを展開しているって書かれてますけど?」って聞くと、「え? 取材なんか来てないよ」っていう(笑)。取材にも来ていないのに「独自の戦い」って何だよ! っていうのがきっかけで、「新聞はけっこういい加減なことを書いているな」と思うようになって。

――深水:”独自”って、要するに「よくわからない」という意味なのかな。

しかも、真面目に政策を訴えようとしているか、というのを記者クラブで判断して、新聞に載せるかどうか決めている。基準はすっごい曖昧なんです。

――深水:記者クラブで決めるんですか?

畠山:そういう取り決めがあるらしいんです。それは、ジャーナリストの岩瀬達哉さんが、昔書いてたのを読んだのですが。実際にそういう人に話をきいてみると、新聞からは電話一本だけの取材しかなかったとか。予め切り捨てられちゃうわけです。でもね、例えば衆議院選挙だったら300万円出して立候補しているんです。それなのに名前は申し訳程度に1行載るだけで、良くて「独自の戦いをしている」とか。もうちょっと聞いてあげてもいいんじゃないかと思うんですよね。

――深水:ていうか、そこの扱いでまず票に差がつきますよね。基準が曖昧なところでそれが決まってしまうんですね。

畠山:実際は、新聞にどう扱われるかっていうので”票数”って違ってくるんですよ。それだけ新聞は大きなメディアだということです。実際は、そういう”インディーズ候補”でもかなり面白いことを言っていたり、いいアイディアを持っているんです。もちろん、だからこそ立候補をしたという人たちなんですね。ただの売名行為っていう人もいるかもしれないですけど、そういう人でも本当に「自分がこれをやりたい」っていうのがないと、立候補なんてしません。なかなか立候補して選挙運動するのって大変なんですよ。ただ、自分の名前を売りたいからっていうだけでは立てないです。”インディーズ候補”の人達って、すっごい嫌がらせとかもされますし。

――深水:世間から見たら変な人みたいな扱いになる場合も。

畠山:そうそう。変人扱いされちゃうので。やっぱり立候補する前に、家族に全力で止められたりとかするわけです。お金もかかりますしね。子どもがいたら「お前の父ちゃん何だ? 立候補して」と言われたりとかするわけです。

――深水:それを取り決めているのは、どこの記者クラブなんですか?

畠山:東京都なら都庁のクラブでそういう取り決めをしていました。指摘されてからは無くなったかもしれないですが、報道を見ている限りだと今でもそういう感じですね。だから、インディーズ候補の人たちが裁判で「平等に扱え」ってことを訴えたりもしました。ドクター中松さんは「俺は泡沫候補でない」ということをすごく強く主張して、時には裁判を起こすので、わりと載るようになっている。

――深水:ああ、同じ候補なのにそれくらいがんばって主張しないと駄目なんですね。主張しない人は新聞紙面での扱いは小さいまま?

畠山:まあ、そうですね。中には「僕はそんなことしなくていいんだ。政見放送だけでいいんだ」とか、奥ゆかしい方々がいらっしゃるんです。それでも、家族から大反対されてでも立候補する理由って何なんだろう? って気になるんですよね。

――深水:それを雑誌の連載にしたり、本にまとめたり。

畠山:まあ、でもね、雑誌の連載に書くとはいってもやはりそこでも扱いは小さくなっちゃう。それでも新聞とかに比べたら政策のこともちゃんと書くので、大きめなんですけれども。書籍の『インディーズ候補列伝』では、ほとんど雑誌に載っていなかったことを書きました。そういう意味では変な本というか珍しい本だったと思います。

(つづく)

(編集サポート:kyoko)

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