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 人間は「つながり」を持てるのは150人までという説がある。この説を唱えているのは英国の文化人類学者ロビン・ダンバー(Robin Dunbar)教授。同教授の名前を取ってこの数字はダンバ・ナンバー(ダンバー数)と呼ばれる。ダンバー数とは「それぞれと安定した関係を維持できる個体数の認知的上限」と定義されているが、Robin Dunbar教授自身の説明によると、信頼と責任を持って接する人たち、過去に個人的な関係を持ったことのある人たちの数、ということらしい。

 同教授が「深い付き合いの輪は150人が限度」という学説を唱えるようになったのは、猿の研究がきっかけになった。猿はグループで行動する。社会的動物だ。主に毛じらみを取り合うことで、社会的に触れ合う。同教授は、猿のグループのサイズと、毛じらみを取る時間、脳の大きさについて調べてみることにした。

 というのは、これまでに社会生活を送る動物の脳が大きいことが分かっていたからだ。実は、ほとんどの動物は集団生活をしない。集団で生活するのは、哺乳類、特に霊長類に限られていて、そのほかの動物にとって社会生活と呼べそうなのは、メスとオスが対になることぐらい。鳥類は大別すると、生涯を通じて一羽のオスと一羽のメスが添い遂げる鳥、1シーズン限定でオス、メスが一対になる鳥、相手にこだわらない鳥、の3つのグループが存在する。そして脳の大きさは、生涯を通じて一対で生活する鳥の脳が最も発達している。このことから、長い時間に渡って親しい関係を維持するのには高度な脳の処理能力が必要なのかもしれない、ということが分かる。

 そこで38種類の猿の仲間を調べみた。そうすると、この3つの要素に相関関係があったという。毛じらみを取る時間が長く、一緒に生活するグループが大きな猿の種類ほど、脳が大きいのだという。

 集団生活をするのには、頭脳を使わないといけないのではないか。集団生活をすることで頭脳が発達するのではないか。同教授はそう考えた。反対に脳の大きさから集団生活のグループの大きさを逆算できるのではないか。そう考えたダンバー教授は、この猿のデータを人間に当てはめてみた。人類の平均的な脳の大きさからすると、グループの大きさは約150人ということになった。
 実際に人間は、150人のグループで生活をともにするのだろうか。現代でも主に狩猟生活をする部族の調べたところ、グループの規模は150人前後のところが明らかに多かった。先進国でも、アンケート調査した。「互いに友人、知人と認識し合っている人は何人くらいいますか」と聞いたところ、これも約150人だった。
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