韓国側に軍人だけでなく民間人の死傷者も多数出た北朝鮮による延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件は、欧米でも連日トップニュースとして報じられている。日本では、軍事衝突が一気にエスカレートする可能性は低いとの見方が大勢だが、果たしてそうなのか。世界の政財界のリーダーたちが愛読するイギリスの高級紙「The Economist」の編集長時代に北朝鮮問題を頻繁に取り上げた国際ジャーナリストのビル・エモット氏は、朝鮮半島の危機的状況は継続しており、日米中韓の関係各国が互いの立ち位置と役割を取り間違えると、文字通り報復が報復を呼ぶ不測の事態に陥る可能性も十分にあり得ると警鐘を鳴らす。
(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集長、麻生祐司)


Bill Emmott(ビル・エモット)
1956年8月英国生まれ。オックスフォード大学モードリン・カレッジで政治学、哲学、経済学の優等学位を取得。その後、英国の高級週刊紙「The Economist(エコノミスト)」に入社、東京支局長などを経て、1993年から2006年まで編集長を務めた。在任中に、同紙の部数は50万部から 100万部に倍増。1990年の著書『日はまた沈む ジャパン・パワーの限界』(草思社)は、日本のバブル崩壊を予測し、ベストセラーとなった。『日はまた昇る 日本のこれからの15年』(草思社)、『日本の選択』(共著、講談社インターナショナル)、『アジア三国志 中国・インド・日本の大戦略』(日本経済新聞出版社)など著書多数。現在は、フリーの国際ジャーナリストとして活躍中。
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――北朝鮮の砲撃事件をどう見たか。

 1953年の朝鮮戦争休戦後初めて陸上の非軍事施設をターゲットに行った攻撃という意味で、ここ数十年の間に繰り返されてきた他の軍事衝突とは同列に語ることのできない、文字通り南北対立の半世紀の歴史の中で最も深刻な出来事であり、これによって、朝鮮半島情勢は極めて危険なステージに突入したと言ってよいと思う。

 1983年に北朝鮮の複数工作員の手によってビルマ(現ミャンマー)のラングーン(現・首都ヤンゴン)で起きた爆破テロ事件も、多くの韓国政府高官や閣僚が命を落とすという非常に凄惨な出来事だったが、あの当時は北朝鮮の核武装問題は深刻ではなかった。だが今は違う。北朝鮮の核武装増強の可能性もある中で、民間人も攻撃のターゲットになるという最悪の事態が起きた。

――軍事衝突がエスカレートする可能性もあると考えるか。

 民間人の居住地域をターゲットにしたという事実は、あまりに重い。金正日(キム・ジョンイル)総書記の後継者として30歳にも満たない金正恩(キム・ジョンウン)氏が指名されたばかりであり、次代の指導部のリーダーシップもいまだ脆弱であることを考えると、韓国や米国の動きに刺激されて、何かの拍子に軍主導で一気に攻撃がエスカレートする可能性は否めないと思う。

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