『太宰は女である』の真意とは?

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 2009年は太宰治の生誕100周年ということで、これまでで最も太宰作品がメディア化された年だったといえるだろう。
 書籍だけに絞るなら、これまでにも太宰治を扱ったシリーズは各出版社で企画されてきたが、それらの出版社とは異なった切り口で太宰治シリーズを刊行している出版社がある。

 パブリック・ブレインがその一つ。2009年に、同氏の生誕100周年を機に太宰治シリーズを刊行、今回その第四弾として短編集『太宰は女である』が発売された。
 この作品は、太宰作品の中から女性独白体のものを集めた短編集だが、最も特徴的な点は他にある。掲載されている「きりぎりす」「ヴィヨンの妻」「葉桜と魔笛」「女生徒」のイラストを、宇野亜喜良氏、会田誠氏、林静一氏、オカダミカ氏ら“女性”を描くことに定評のあるアーティスト陣が描いている点だ。
 
 大御所から新進気鋭までそろったアーティスト陣は、太宰作品から何を感じとったのか。『太宰は女である』発売記念イベントが行われた神保町・東京堂書店に潜入。イベント開始前の宇野亜喜良氏とオカダミカ氏、またパブリック・ブレイン社のCEO・山本和之氏にお話を聞いた。

◇ ◇ ◇

■『太宰は女である』のコンセプト
 まず『太宰は女である』のコンセプトについてだが、山本氏によると「近年は女性の力が強くなってきていることもあるので“女性”をテーマしておきたいと思っていた。しかし、ただ女性独白体の作品をまとめても、既に文庫もたくさん出ているのでおもしろくない。だから絵を入れようと思い、アーティストの先生方にお願いしたらOKしてくれた。そして絵を観るだけでなく飾れる形にしようと、絵のページに切り取り線を入れて切り取れる形にした」

■『太宰は女である』アーティスト陣の印象は?
 では、『太宰は女である』というこの一件挑発的ともいえるタイトルについて、宇野氏とオカダ氏はどんな印象を持っていたのだろうか。

 オカダ氏は「当初は太宰が女だとは思わなかったので、意味としてしっくりきたわけじゃなかったんですけど、でも読み返してみると女の嫌なところを良く知っているなと(笑)こういうところって男の人の方がよく知っているのかもしれません」と語り、一方の宇野氏は「女性的だと言われる“嫉妬”にしても、女性よりむしろ男の方が強いんじゃないかと思います。太宰作品の女っぽさに関しては、太宰の創作による部分もあると思いますが」と分析した。

 また『太宰は女である』の魅力について宇野氏は「読者が直接活字からイメージするというのが読書の楽しみなので、本来小説に絵をつけるというのは反対なんですよね。でもこの本はアーティストの名前がカバーに出ていたりするので、この本は絵で売るのかなという感じがあります」と語り、オカダ氏は「時代の違う作品をアーティストが選んだという基準でまとめてあるので、短編集をただ読む感じともまたちょっと違うと思います。それぞれの作品の後にアーティストのインタビューがあって、一個一個の作品が切り離されているところがいい。自分以外のインタビューを読むととてもおもしろかった(笑)」と語ってくれた。


 『太宰は女である』の表紙

 この取材の後に行われた出版記念イベントのトークセッションも、二人は太宰に関してにとどまらず、イラストレーターの仕事やお互いの絵についての意見など、活発なものだった。
 このイベントは2010年11月26日(金)にも、同じく神保町の東京堂書店にて、会田誠氏、林静一氏をゲストに招いて開催される。

 これまでとは違う切り口から太宰作品を味わってみたいという人はぜひ参加してみてほしい。
(新刊JP編集部/山田洋介)


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