海堂尊小説のキャラクターたちの若かりし頃を描いた小説

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 海堂尊氏の作品の醍醐味といえば、現代の医療問題を鋭く突いた社会性の強さだろう。
 海堂氏自身も外科医を経て現在は病理医としても活躍しているので、内容がリアルで迫力がある。それでいてミステリーの要素もあり、医療エンターテイメント小説として楽しむことができる。

 それだけではない。まだまだ醍醐味はある。架空の地方都市「桜宮市」を主な舞台とし、多くの作品間で登場人物がリンクする。作品の時系列や登場人物の相互関係を見るだけでも面白い。

 今年8月に文庫化された『ひかりの剣』(文藝春秋/刊、単行本は2008年8月刊行)は、今までの作品とは色が大きく異なる。医療ではなく、剣道の物語なのだ。
 物語の舞台は、1988年の桜宮市の東城大学と東京の帝華大学。「東城大の猛虎」と称されるは速水晃一と「帝華大の臥龍」の清川吾郎の2人が中心となり、年に1度開催される医学部の剣道大会である“医鷲旗大会”で、優勝の医鷲旗を争うというストーリーだ。
 剣道に熱心で責任感の強い速水と剣道の才能を持ちながらもサボり魔の清川が、お互いに触発されレベルアップしていき、医鷲旗大会で合間見える。

 実はこの2人、海堂ファンならお馴染みの人物だ。速水は『ジェネラル・ルージュの凱旋』(宝島社/刊)で、清川は『ジーン・ワルツ』(新潮社/刊)で主要人物として登場する。他にも高階権太、田口公平、島津吾郎など他の作品で活躍する人物が『ひかりの剣』にも登場するので、他の作品にも手を伸ばしたくなる内容だ。

 “海堂尊といえば医療エンターテインメント小説”と思っている人は、違和感を覚える人もいるかもしれない。だが、海堂氏の新たな一面を読むことのできる作品であると言えよう。
 『ひかりの剣』は1988年が舞台。同じく海堂尊作品の『ブラックペアン1988』(講談社/刊)も本作と物語の時系列が同じ、話が重なる部分もある。これも合わせて読めば、より海堂尊ワールドを楽しむことができるだろう。
(新刊JP編集部/田中規裕)


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