主人公は中卒で働く16歳の少年。父と母はあやしい稼業にいそしんでいて、中学生の妹が家事の一切を取り仕切る。小学生の弟は週に数回しか学校へ行かず、半ひきこもり状態。『at Home』に登場するのは、特殊な家族である。

 と思わせておきながら、作者・本多孝好はさりげなく私たちに気づかせる。一見変わっているけど、彼らこそ普通の家族じゃありませんか、と。

 彼らは毎晩夕食をともにする。「いただきまーす」の声で始まる、絵に描いたような家族団らん。私たちが思い描く、普通の家庭ってたしかにこんな感じだ。けれど、こんな風景を毎晩繰り広げる、「普通の」家族がいまの日本にどれくらいいるだろう。仕事で帰宅の遅い父、塾やバイトで帰らない子供、ひとり自分で作った食事をとる母。こちらのほうがずっと現実的だ。

 そんな彼らの平凡な日常に、事件が起きる。悲しい出来事に一致団結し、策が練られる。そして、彼らのそれぞれの秘密が明かされる。最初に感じた「特殊さ」に理由があることを知り、私たちは納得する。けれど、そこで話は終わりではない。理由がわかったからこそ、彼らを全面的に応援し、彼ら家族の幸せを願わずにはいられなくなる。

 主人公も父や弟の「家族のため」という強い思いを感じ、自分たちの幸せをつかみとろうと一歩前へ踏み出すのだ。

 普通の家族のねじれた実像。
 奇妙な家族のシンプルな愛情。
 
 この二つが作品に織り込まれていて、バランスをとっている。だから、彼らの純粋な家族愛を見せつけられても、いやな感じがしない。

 家族のかたちは、じつは千差万別。だったら、こんな家族がいてもいい。結末に登場する新しいファミリーもいい感じ。こんな人たちがいてくれたら、この世の中はずいぶん救われるはずだ。



『at Home』
 著者:本多 孝好
 出版社:角川書店
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